政治

2023.08.05 08:30

原爆投下から78年。置き去りにされた原爆被害者の真実

尹大統領は就任以来、北朝鮮を「主敵」と表現して敵対姿勢を強めている。慰霊碑訪問後の首脳会談でも、両首脳は「北朝鮮の核・ミサイルの脅威が高まる厳しい地域情勢の下で、韓米日間の緊密な連携をさらに強固なものにすべき」との認識で一致した。

さらに、サミットで採択された核軍縮の共同文書「広島ビジョン」でも、米英仏の核は不問にする一方で、北朝鮮に対しては「完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な(核兵器の)放棄」を求めた。

日韓首脳による慰霊碑訪問も、G7各国による広島ビジョンも、北朝鮮と敵対する姿勢を打ち出して終わった。金さんは落胆と憤りを隠さない。

「そもそも北朝鮮が核を持ち始めたのは、朝鮮戦争中にアメリカが核兵器の使用をほのめかしたから。北朝鮮は、アメリカの脅威がなくなれば非核化を実現すると主張し続けています。本気で核廃絶を目指すのならば、全ての国が核を捨てる勇気を持たなければなりません」

金さんの願いは今、南北統一の原爆犠牲者慰霊碑を平和記念公園内に建立することだ。南北統一と、核廃絶に向かう第一歩を、広島から実現したいと願っている。

この準備はすでにある。2001年に、総連広島県本部と民団広島県地方本部、そして広島市は「すべての在日韓国、朝鮮人原爆犠牲者を慰霊・追悼する統一碑を平和記念公園内に建立する」との確認書に合意している。ただ、これまでも話し合いは持たれてきたが、文言や場所の調整が思うように進まず、いまだ実現できていない。

「南北の分断が深まる今だからこそ、統一碑を建てたいんです」

金さんの言葉は真なる「平和」の意味を問いかける。置き去りにされた北朝鮮の原爆被害者に目を向けることから、平和への一歩を踏み出せないだろうか。

文=小山美砂

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