クレイ:国内にロケットを発射できる場所はどれほどありますか。
大出:JAXAがある鹿児島県の種子島と内之浦、和歌山県の串本町、大分空港、沖縄県の下地島空港、そして北海道大樹町です。なかでも民間企業など誰もが使えて、メインストリーである垂直打ち上げのロケットを打ち上げられる宇宙港は北海道だけなんです。
大樹町は台風による影響を受けることが少なく、冬場も十勝晴れと呼ばれる晴天が続く。安全性や騒音などの観点から人口が密集していないことや空や海の交通と干渉しにくいなど良い条件がそろっています。建設予定も含めた世界約70カ所のスペースポートの中でも、世界有数の宇宙港になり得るポテンシャルの高さを有しています。
民間が宇宙ビジネスを牽引する時代に、アジア初の商業のスペースポートとして最大限にこの強みを打ち出していきます。
クレイ:アクセス面もよさそうですね。
大出:世界には砂漠の真ん中に建つ発射場もあります。車で何時間もかけて辿り着いた後、ロケットの最終組み立てや人工衛星の取り付け、打ち上げ作業などで1カ月ほどオペレーターの方々はその地に缶詰め状態になるんです。
大樹町の場合、羽田空港から帯広空港までが1時間半。帯広からも車で1時間かからないし、町内で宿泊もできる。北海道はワールドクラスの観光地ですから食も美味しく温泉やアウトドアアクティビティも豊かで、アクセス面、環境、生活面でも非常に恵まれているんです。
クレイ:今年度も企業版ふるさと納税に賛同する企業は増えそうですか?
大出:まだ何とも言えないのですが、寄付を継続していただける企業は多いですし、私たちの暮らしに宇宙ビジネスが具体性をもって近づいてきているので関心を寄せてくれる方が増えていることを実感します。
クレイ:大樹町には「宇宙版シリコンバレー構想」もあるんですよね?
大出:人工衛星打ち上げロケット用の発射場としてLC-1(Launch Complex-1)という発射場の建設工事が進んでいます。また、多くのロケット事業者のニーズに応えるべく高頻度な打ち上げのためにLC-2(Launch Complex-2)という射場の構想も。2027年頃には年間10機ほどのロケットが打ち上げられるのではないかと思います。
そうなると宇宙関連の雇用が地域に2000人ほど生まれ、観光客や出張者も年間で約17万人に増え、年間約270億円の経済効果が見込まれるという試算もあります。
ライト兄弟の有人動力飛行から110年、1日に20万機以上の飛行機が飛ぶ時代になりました。ガガーリンが人類初の有人宇宙飛行をしたのが60年前です。あと数十年後には、1日20万機以上のロケットが飛んでいてもおかしくないと思いませんか?
イーロン・マスク氏はロケット技術で地球上の2地点間をどこでも30分程度で繋ぎ、人や物資を輸送することを提案しています。ロケットの着陸はすでに成功しているので、安全性やコストの課題がクリアできれば十分実現可能です。そうなると、ますますスペースポートの価値は高まっていくと思います。
クレイ:実は宇宙ビジネスは遠くなく、私たちの暮らしを変える可能がありますね。
大出大輔◎1991年生まれ。SPACE COTAN取締役兼COO。一級建築士、博士(工学)。2015年、大林組入社。バスタ新宿の現場監督を経て、耐震技術の研究や新規事業創出に取り組む。内閣府主催の宇宙のビジネスアイデアコンテストS-Booster2018での受賞を機に宇宙ビジネスに携わり、2021年4月より現職。
クレイ勇輝◎実業家。2005年、神奈川県の逗子海岸で海の家ライブハウス音霊 OTODAMASEA STUDIOを発足し、音楽ユニット「キマグレン」結成。2008年、NHK紅白歌合戦に出場。今も実業家として様々な分野で活動している。