牛の糞尿からロケット燃料。シン地産地消な宇宙開発とは

プレスリリースより

北海道スペースポートがある大樹町に拠点を構え小型ロケットの開発を進めるインターステラテクノロジズは、超小型人工衛星打上げロケット「ZERO」の燃料に、十勝地方の牛の糞尿をから製造する液化バイオメタン(LBM)を使うことを決定した。高性能、安価、安全で環境にもやさしいことから世界のロケット産業も注目する液化メタンだが、家畜の糞尿を原料とするLBMは、酪農家の悩みである牛のメタン排出の削減に貢献できるうえに、地元で容易に調達できる一石三鳥のサステナブルなロケット燃料として期待される。

スペースXが「スターシップ」に採用するなど、世界のロケット産業が導入を進めている液体メタンは、インターステラテクノロジズも2020年に導入を決め、調達方法を検討していた。そこに登場したのが、インターステラテクノロジズの企業向けパートナーシッププログラム「みんなのロケットパートナーズ」に加入したエア・ウォーター北海道だ。同社は、十勝地方の家畜の糞尿から発生するバイオガスを液化天然ガスの代替燃料となるLBMに加工し、地域循環型サプライチェーの構築を進めている。そこがうまくマッチングした。ZEROに使われるLBMは、通常のロケット用液化メタンと同等の99パーセント以上という高純度を誇る。
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牛などの家畜のゲップやオナラに含まれるメタンは、二酸化炭素に並ぶ温室効果ガスであり、酪農が盛んな北海道ではメタンの排出削減が課題になっている。また、糞尿による臭いや水質汚染が社会問題にもなっている。それをロケット燃料に活用しようというのは、じつにサステナブルで夢のあるソリューションだ。

ZEROは、人工衛星の需要が増加するもロケットが不足している現状を、もっと安く高頻度にオンデマンドの打ち上げを可能にして、「宇宙の民主化」を目指して開発されている。またインターステラテクノロジズが拠点とする大樹町は、民間主導のスペースポートを中心にした「宇宙のまちづくり」に取り組んでいる。JAXAや研究機関をはじめ、多くの宇宙関連企業が集まって実験やロケット開発を行っているが、今回のインターステラテクノロジズとエア・ウォーター北海道によるLBMへの取り組みは、そんな「宇宙のまち」ならではの出会いだった。LBMを使用したエンジン燃焼器単体試験が、この秋にも北海道スペースポートで予定されている。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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