顧客の時間価値へのこだわりを軸に価値提供を加速
次に始まったのは、「進化の鍵」を明らかにする3部構成のセッションだ。「セッション1」ではmeviy事業部 事業部長の柳沢将人が登壇、「顧客時間価値へのこだわり」をテーマに、顧客起点で行っている開発について話し始めた。「開発はVOC(Voice Of Customer/顧客の声)と顧客の設計データによる需要把握からスタートします。その結果、サイズだけでなく形状を規定する幾何公差の指定が必要な高精度部品をはじめ、旋盤加工などに使われる丸物部品や溶接部品にも対応していきます」
当然こうした顧客起点の開発は、グローバルにも有効なはずだと、柳沢は締め括った。
続く「セッション2」は、「価値提供加速の仕掛け」をテーマに、シリコンバレー、フィンテック企業、メビー開発責任者を経て、DTダイナミクス(以下、DTD) 代表取締役社長に就任した、道廣隆志が登壇した。
「継続的な企業成長のためには、エンジニアが主体となってプロダクト開発を進めるべき。その思いとともに、メビーを生み出した精鋭エンジニアリング部隊を結集して立ち上げたのが、DTDです」
ミスミはものづくりにおける価値創造=「時間を創出する」企業だ。その価値はもちろん世界中で変わらない。そのグローバル進出のコアとなるのがこの戦略的子会社のDTDである。
「AI(GPT-4)コーディング補助環境を整備してアジャイル開発を容易にし、人材はグローバルで調達しています。開発スピード向上、Web・3D形状認識テクノロジーの結集、スクラム開発などの組織設計などを最速で実現するために、DTDは別組織として誕生したのです」
「セッション3」は「AI徹底活用」について言及された。meviy Lab ジェネラルマネージャーの芝田篤史は、顧客時間価値拡大のために、AI活用とオープンイノベーションが欠かせないと指摘した。
「コンピューターサイエンス分野で知られる米・カーネギ―メロン大学とAI開発で共同研究を行っています。なぜならミスミの膨大なカタログ図面データを活用するために、AIは必要不可欠だからです」
未来の製造業の発展に向けてミスミ/メビーができること
総務省によれば、若年就業者数は約20年間で129万人減少したという(23年3月時点:総務省 労働力調査)。当然、育成面でも指導できる人材は不足する一方だ。再び登壇した吉田は、ユーザーの「メビーを使うと若者の設計能力が上がる」という声が多かったことから、教育面へ注目し始めたという。「メビーを使用すると、アップロードしたデータが実際に製作可能かどうか検証され、不可能な場合は『確認事項』としアラートが出るのです。豊富なミスミのカタログ図面データをもとに、ベテラン指導者/教師のように設計の不具合を指摘してくれることで、若手設計者のスキルが上がっていくというわけです」
ミスミがそうした未来を担う人材育成を考え、スタートさせたのがものづくりに挑戦する学校法人を対象にした特別支援期間限定プログラム「meviy for Education」だ。
「年間10万円/1校までメビーの部品を無償提供する仕組みで、未来のものづくり人材を生み出すのです」
そうして育った人材と、グローバルからの人材がメビーをより強力に世界で通用する企業へ押し上げていくと、吉田は確信している。
「今年中に、メビーは中国・アジア進出を予定しています。なぜならそこには大きな需要があるからです。グローバルで部品製造を行っている企業/供給するサイトは存在しますが、工業レベルの高精度機械部品を提供できるサービスは、現時点でメビーしかないからです。
世界中のものづくりの現場を支えるために、ミスミ/メビーはこれからも進化していくつもりです」