それでも、CDCの数字でさえ、Lancet誌に発表された研究に記されているイングランドとウェールズ、さらには世界全体に関する数字にははるかに及ばない。
観察が容易に思える同一の出来事に関して、政府機関の発表する推計値にこれほど大きな差が出るのは、これが初めてのことではない。今回のケースでも、両機関の「関連死」の定義や、測定の前提条件の違いが、寒さや暑さが原因で亡くなった人の数の集計データに影響を与えているのだろう。
寒さと暑さに関連する死者数の違いについて、おおよそのところを把握するもう1つの方法としては、冬季とそれ以外の季節の死者数を比較する方法もあるだろう。一般に米国では、冬季の死亡率は、それ以外の期間との比較で8~12%上昇する。これを寒さと結びつけて考えることもできるが、インフルエンザなどの呼吸器系疾患が冬に蔓延しやすいという事情も絡んでいるはずだ。
あらゆる要素を考えに入れると、任意の1年という期間で見た場合は、暑さよりも寒さが原因で亡くなる人の方が多くなる可能性が非常に高い。地球温暖化が進むなかで、暑さで亡くなる人の数は増え、逆に寒波による死亡者の数は減るだろう。そして、寒さによる死者数が減少する速度は、暑さによる死亡者の増加スピードよりも速い。そのため全体で見ると、極端な気温によって亡くなる人の数は少なくなっているように見えるようになるはずだ。
しかし、このことを理由として、地球温暖化は良いことだと解釈するべきではない。気候変動は、海面高度や動植物の生命、農業などに長期的な影響を及ぼしている。そのどれもが、人間の心身の健康を悪化させる変化だ。
加えて、暑さによる死者増加の影響がとりわけ大きいのは、米国の貧困地区を含む、世界でも貧しい地域だ。ゆえに、今後時が経つにつれ、こうした地域は、気温に関連する死者の増加によるネガティブな影響を受けるはずだ。
(forbes.com 原文)