「まずは関東から関西を安全に走行できるよう、作り込んでいきます。『技術的にできる』ことと、『安全にオペレーションする』こととは別問題と考えます。人間と同等以上の安全を担保し、お客様に使って頂けるサービスにしなければなりません。『自動運転技術を活用した社会インフラを構築し、日本の物流の未来を支える』をミッションとして、社会課題を解決する取り組みを目指します」(下村氏)
今後の実証実験には「事故ゼロを目指して、誰が見ても一目見て自動運転の実証実験をしていると判別できるように黄色の目立つ色合いに塗装されたトラックを用いる予定」だという。「黄色いトラックを見かけた際には、自動運転実現に向けた社会実験を進めていると理解頂ければ嬉しい」と述べている。
速度規制緩和議論の前に課題は山積──
報道では「自動運転技術の実証実験が成功した」側面のみが切り取られがちだ。しかしその裏側では、ひとつひとつのシミュレーションが入念に行われている。自動ブレーキ技術が発達し、交通の安全が担保できたとしても、ただちに荷物を安全に運べることとイコールにはならない。自動運転専用レーン、乗用車の少ない夜間、無人運転などの条件が揃えば、速度規制の緩和も安全に叶うかもしれない。しかし事業用車において今すぐに実現するものではなさそうだ。技術的に可能になったとして、トラック運送業界の99%を占める中小企業に、高価になるであろう最新技術を有したトラックが行き渡るかといえば疑問である。だとすればT2のようなビジネスモデルが台頭するのか。はたまた、安全性の議論はおざなりなまま進んでしまうのか。速度規制の緩和については慎重な議論を求めたい。
田中なお◎物流ライター。物流会社で事務職歴14年を経て、2022年にライターとして独立。現場経験から得た情報を土台に、「物流業界の今」の情報を旺盛に発信。企業オウンドメディアや物流ニュースサイトなどで執筆。