経済・社会

2022.06.03 11:30

月に344時間の時間外運転も。物流2024年問題と「宅配クライシス」

Photo by sinology / Getty Images

欲しいときに欲しいモノが届かなくなる物流の「2024年問題」が刻々と迫っている。小売・製造業などに携わる人にとっても、ジャストインタイムでの供給が困難になり、経営を逼迫させる可能性がある。そのうえ、物流費も高騰する見込みだ。

2024年問題とは、働き方改革関連法の施行により、物流に生じる課題を指す。働き方改革関連法は、労働環境の適正化を目指した法改正だ。時間外労働の上限規制、月60時間を超える時間外労働に対する賃上げ、勤務間インターバル制度の促進などが挙げられる。

ドライバーの時間外労働に「年960時間の上限規制」──


中でも問題になるのが、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働に課せられる「年960時間の上限規制」の適用だ。これまでの物流のあり方では、長距離輸送がままならなくなり、私たちの生活へ影響する。

厚生労働省の調べによると、「平均的な長距離ドライバー」の1カ月の時間外労働平均は60.4時間。年間に換算すると約725時間になる。規制による上限は960時間のため、その差は年間で約235時間、1カ月換算に戻すと20時間ほどの余裕しかない。


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平均時間というからには、上回るドライバーもいる訳であり、今回の法改正を遵守するには、策が必要になることがわかるだろう。ちなみに同アンケートで「最も長い長距離ドライバー」に関しての1カ月の時間外労働は344時間という回答もあった。

単純に長距離ドライバーの時間外労働を減らせば、運べないルートや荷物が発生する可能性がある。それらの荷物が路線や宅配に流れることにより、宅配ドライバー不足の懸念──「宅配クライシス」の加速も予想される。

消費者に与える影響


つまり消費者として身近にはどういったことが起こりうるのか。

例えば2022年1月から順次始まった、日本郵便の配達日数繰り下げ(普通郵便物、ゆうメールなどについて、届け日数を1日程度遅くする施策)は記憶に新しい。企業で請求書発送業務を行っている人にとって、インパクトがあったのではないだろうか。

配達日数が伸びた原因は、郵便物が減少したこともひとつだが、ドライバー不足に起因する部分もあるといわれている。日本郵便の事象は「2024年問題」に該当する訳ではないが、同じような配達日数の繰り下げや予期せぬ遅延が、どの輸配送にも増える可能性があるのだ。

結果として、現状のように「欲しいものは大抵翌日に手に入る」といった便利さはなくなるかもしれない。

今、「2024年問題」は厚生労働省、経済産業省などの各省庁、物流業界をあげて取り組まれ、金融業界からの出資も進んでいる解決必須のトピックといえる。

2024年問題に向けてできる取り組み


私たちにできることは大きくわけて、「ドライバーの労働時間短縮への協力」と「車両積載率向上への協力」の2つだ。メーカー・卸・小売業、一般消費者、物流業に分けて具体的に考えてみよう。
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文=田中なお 編集=石井節子

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