経済・社会

2022.06.03 11:30

月に344時間の時間外運転も。物流2024年問題と「宅配クライシス」

Photo by sinology / Getty Images


サッポロビールと日清、「ビール樽と即席麺」での施策


まずはメーカー・卸・小売業の協力がなくては「2024年問題」の緩和はありえない。国や物流業から多角的な要請を受けて、どこまで許容できるかが鍵になる。2022年3月には経済産業省・国土交通省よりフィジカルインターネット・ロードマップが公表され、それに基づき各業界で対応策が策定された。
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2022年3月に経済産業省・国土交通省より公表されたフィジカルインターネット・ロードマップ(出典:経済産業省)
出典:経済産業省

その中で挙げられているのが、トラックの積載効率を上げるための「パレット・外装サイズの標準化」「リードタイムの緩和」「共同輸送」への取り組みだ。共同輸送について、2022年2月にはサッポロと日清がビール樽と即席麺を同じトラックに混載し、大阪府ー静岡県間、実車率100%の幹線輸送を実現させた例もある。

その他にも、小規模事業者ができる取り組みとして「配達希望日・時間指定が可能な通販サイトへの改良」などが挙げられる。
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倉庫や工場の現場では「トラック待機時間の緩和」が優先すべき課題だ。そのために必要なのが、入場するトラックのスケジュール管理である。国土交通省における「ホワイト物流」の推進運動では、トラックバース予約システムの導入が推進されている。

一般消費者にできること


次に個人でできることはどうだろうか。一番身近な場面でいうと「再配達の削減」が挙げられる。

ドライバー不足の中、不在の家に足を運び、ルートを考え直して再配達するのは、非効率的だ。またお届け日数や商品の外装箱に対する品質に、もう少し「寛容になること」も、間接的に「2024年問題」の手助けとなるだろう。

運送会社にできること


そして最後に物流業──とりわけ運送会社ができることは「ドライバーの確保」「長距離に対する中継輸送の検討」「荷主企業へ協力の要請」だ。

特に中継輸送に関しては国土交通省から提案がなされている。中継地点でのドライバーの交替、ヘッドの交換、荷物の積み替えといった3パターンだ。すでに取り組んでいる会社では、日帰り運行をメリットに感じた若年層がドライバー職に応募、採用につながるという副次的な効果もあったという。

「2024年問題」は様々な視点から改善に取り組みが始まっている。個人レベルの小さな取り組みからITや技術を駆使した大きな改善まで、できることは幅広い。

2022年4月にリリースされた、長距離輸送における中継地の敷地をシェアするサービス「ドラ基地」を運営するスペースは2児の母が代表であり、主婦的発想から生まれたサービスなんだとか。

2024年まであと2年。自由な発想を持てば、課題解決に向けて私たちができることはまだまだあるのかもしれない。

田中なお◎物流ライター

田中なお◎物流ライター。物流会社で事務職歴14年を経て、2022年にライターとして独立。現場経験から得た情報を土台に、「物流業界の今」の情報を旺盛に発信。企業オウンドメディアや物流ニュースサイトなどで執筆。

文=田中なお 編集=石井節子

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