主に宅配に使用される事業用軽貨物車(黒ナンバー車)の重大事故が増加していると読売新聞が報じた。2016年から2021年の5年間にかけて、交通事故全体で見ると約4割減少傾向であるにもかかわらず、事業用軽貨物車が「第一当事者」となった重大事故はなんと8割増加したという。
事故増加の背景に参入障壁の低い宅配ドライバーの増加
背景には分母である通販の市場が、ここ数年拡大してきたことが挙げられる。経済産業省によると通販の市場規模は2016年から2020年の間に約4兆円も拡大しているのだ。需要に応じて宅配ドライバーも増え、2021年までの5年間で事業用軽貨物車として登録されている車両も7万台も増加した。
個人事業主として宅配ドライバーを始めるには、特別な許可が必要なく、必要なのは簡単な届け出ひとつのため参入壁が低い。未経験でも始められるが、業務委託の特性上、委託元で手厚い研修や教育はないケースもある。なお個人事業主のため、労働基準法は適用されず、労働時間の規制はない。
運べなければ契約解除
こういった特性を踏まえて、今度はドライバー不足の観点から考察してみたい。アマゾンとの直接業務委託をする宅配ドライバー、アマゾンフレックスを例にとろう。
アマゾンフレックスの時給はおよそ2000円。時間枠内で、配達する荷量を指定される。昨年2021年までは10個/時間ほどの配達が多かったところ、現在では現場によって2倍以上にあたる20個/時間ほどの荷量に増えているという。運びきれない日が続けば契約解除を言い渡される可能性もあり、初心者からは悲鳴が上がる。
夕方から夜間の配達では割増の報酬で仕事のオファーが入ることが多いが「未配になってアカウント停止になるのが怖いから夜には入らない」と、とあるドライバーは話した。夕方以降は昼に増して人手が足りず、ドライバー1人当たりに対する配達の荷量が昼より多くなるからだ。ドライバーからも「これではやっていられない」と言われてしまうわけである。
つまり、人手が足りずドライバー1人あたりの荷量が極限まで増える、契約解除を恐れて荷量の多い時間は働き手が減る、その時間の配達を担うドライバーの負担が増える、といった悪循環が生まれているのだ。