化学分析で判明した粒子の組成は通常では見られないもので、主成分はアルミニウム、シリカ(二酸化ケイ素)、鉄、カルシウムであった。未知の物質の結晶構造を特定する結晶学的分析では、1800度以上の高温下で生成された鉱物との類似性が明らかになった。研究者らは、この粒子が高温起源かつ混合化学組成であることから、核爆発後のキノコ雲が凝縮して形成されたとみている。キノコ雲には鋼鉄、コンクリート、ゴムなどの人工物質が気化した元素の状態で混在していた。研究チームはこの混合鉱物を「ヒロシマイト(Hiroshimaite)」と名付けた。
隕石の衝突により形成されたガラス質物質であるテクタイトや、火山ガラスの一種である黒曜石といった天然に存在するガラスとは異なり、核爆発が生み出した鉱物は独特だ。
戦争中に核兵器が使用された事例は今のところ日本に対してだけだが、ヒロシマイトなどの核爆発から生成される鉱物は、米国の砂漠地帯やシベリア、北朝鮮やインド、パキスタンの山岳地帯、オーストラリアの砂漠、太平洋の環礁など、地球上各地の核保有国の実験場跡地で見つかる可能性がある。
核兵器の爆発や、ウランなどの核分裂性物質の採掘によって、大量の放射性ダストが地球の大気中に放出された。この塵が地表に降下・定着すると、岩石の中に放射性物質の痕跡が残る。そうした痕跡は、地質学を用いてあらゆる場所で検出することができる。
一部の研究者は、人間の技術に関連した放射性鉱物の出現を、地球史上最も新しい地質年代である「人新世」の始まりを示す指標とすることを提案している。
(forbes.com 原文)