このような複雑な政治事情に翻弄されないためにも、国際スタンダードでの持続可能性の証明、トレーサビリティを担保する漁獲証明は、今後ますます重要になってくるだろう。
国連はまさにいま、「国連海洋科学の10年」(UN Decade of Ocean Science for Sustainable Development)と呼ばれるイニシアチブを牽引中である。これはいままでの科学では解決できなかったことを、新しい科学のあり方で解決しようというムーブメントで、2021年から2030年までの10年間での達成を目標としている。
これは、「科学は机上の空論に終わって結果が出せなければ意味がない。いままさに科学の社会実装による結果が求められており、そのためには既存の業界のステークホルダーのみならず、あらゆるステークホルダーが共通意識を持って協働する必要がある」というイニシアチブだ。
そこで消費者にできることは、「持続可能性が担保された商品の優先消費」だ。EU諸国や米国ではそのムーブメントがすでに始まっている。日本でもどの商品が持続可能なのか、その証明の一端となるよう明確にトレーサビリティを示すためにも、 それぞれのステークホルダーに課題がある。
まず行政は、早急に全魚種の漁獲証明書義務化を実現すること。
サプライヤーは漁獲証明義務化に対してデジタル化などの効率を図っていくことと同時に、サプライヤーの意思として、法律では義務化されなかった漁獲証明の内容の消費者に対する明示を自主的に行うことが重要だ。
そして消費者はその明示された情報や、前出のMSCやASC(Aquaculture Stewardship Council)など信頼のおける漁業認証やブルーシーフードガイドなど水産物の評価プログラムの情報をもとに、持続可能な商品を優先的に買うことで貢献できる。
その際には持続可能性という付加価値に対してアップされる価格を受け入れることが求められるかもしれないが、これは大切な「新しい社会の価値の創造」に必要なコストである。
大盛況だった「第0回ジャパンウニサミット」の参加者は、皆、新鮮で甘くて香り高い大粒のキタムラサキウニのどんぶり、刺身、リゾット、にぎりなどに舌鼓を打ちながら、熱心な議論を続けた。
筆者もパネリストとして発言させていただきながら、あらためて現場からの発信の重要性と同時に消費者としての責任を再認識した次第だ。