食&酒

2023.07.24 17:30

北三陸の「養殖ウニ」から考える持続可能な水産物の優先消費 

水揚げされたキタムラサキウニ

東日本大震災から干支が一周した2023年7月。北三陸の岩手県洋野町種市でコロナ禍を超えて4年ぶりに「たねいちウニまつり」が開催された。当日はあいにくの雨天にもかかわらず大盛況。朝早くから新鮮なウニを目当てに、推定2万人もの人々が長蛇の列をつくった。

この日の前日、「JAPAN UNI SUMMIT(ジャパンウニサミット)」というシンポジウムが開催された。

主催は、地元のウニ養殖および加工・販売を手がける「北三陸ファクトリー」の下苧坪之典(したうつぼ・ゆきのり)氏らのグループと、震災時から彼らを支え続けてきた「一般社団法人 東の食の会」の牽引者である「オイシックス・ラ・大地」の髙島宏平代表取締役社長、「カフェ・カンパニー」 及び「ZEROCO」代表取締役社長の楠本修二郎氏、都内および福島県浪江町を拠点に東の食の会の経営に従事する高橋大就氏らの精鋭チームだ。
参加者にウニの養殖の説明をする「北三陸ファクトリー」の下苧坪氏

参加者にウニの養殖の説明をする「北三陸ファクトリー」の下苧坪氏


パネルディスカッションの登壇者には元デジタル副大臣の小林史明衆議院議員、オーストラリア大使館商務公使のエリザベス・コックス氏をはじめ、ミシュラン3ツ星を獲得したレストラン「レフェルヴェソンス」の生江史伸シェフやアカデミア、漁師、流通など各界のバラエティに富んだメンバー約100名が、新鮮なウニが食べられるという美味しい特典も背中を押してか、一堂に集結となった。筆者も「世界から見る海の未来」というテーマで、パネリストを拝命した。
4年ぶりの「ジャパンウニサミット」開催で会場は大盛況

「ジャパンウニサミット」の翌日に開かれた4年ぶりの「たねいちウニまつり」も大盛況

全魚種に対する漁獲証明書の義務化

近年、地球温暖化で「磯焼け」による藻場の減少が世界的な問題となっている。磯焼けとは、海藻が繁茂して藻場を形成している沿岸海域で、海藻が著しく減少や消失して、繁茂しなくなる現象を指す。

海藻は「魚たちのゆりかご」とも呼ばれ、さまざまな魚種の住処であり、産卵場であり、ウニなどの餌ともなる。日本沿岸でもこの藻場の減少によってアワビやウニの漁獲が激減し、漁師たちが悲鳴を上げ続けているのが現状である。

そこで、「Universal Agenda(ユニバーサル・アジェンダ)」にひっかけ「UNIversal Agenda(ウニバーサル・アジェンダ)」と名付け、藻場の再生とウニの持続可能な養殖に取り組む施策を議論するのがこのセッションの目的であった。

議論のなかで注目されたのは、持続可能な漁業、持続可能な海洋環境への取り組みは、サプライチェーンの努力だけでは成立しない、エンドユーザーである消費者の価値観のシフト、プライスプレミアムの受容の重要性であるというものだった。

さらに次世代の育成や藻場の再生と地域産業の活性化による新たな街づくりも課題として挙げられた。
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文=井植 美奈子

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