映画

2023.07.22 16:30

トム・クルーズが「ミッション・インポッシブル」に体を張る理由

田中友梨
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監督と脚本のマックQの功績

「ミッション:インポッシブル」シリーズの魅力は、世界各地を舞台としたロケ地にもある。今回は前述のようにアブダビの空港から始まり、荒涼とした砂漠に飛び出し、イタリアの街を小型のフィアットで走り回り、そしてベネチアのラビリンスのような水路へと物語が展開していく。

最後は、オーストリア・アルプス(実際のロケ地はノルウェーだが)を走るオリエント急行を模した列車を舞台に、ライバルたちとのバトルシーンが展開されていく。これらのダイナミックな展開は圧倒的で、過去最大かもしれない。

当初「ミッション:インポッシブル」シリーズは、毎回異なる監督がメガホンをとっていたが、大成功を収めた5作目の「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」から最新作までは、クリストファー・マッカリーが継続して監督を務めている。

通称「マックQ」ことクリストファー・マッカリーは、アカデミー賞脚本賞を受賞した「ユージュアル・サスペクツ」(ブライアン・シンガー監督、1996年)の脚本家として名を知られるようになった。

その後、トムが主演した同じブライアン・シンガー監督の「ワルキューレ」(2008年)に、脚本と製作で参加したことがきっかけで、「ミッション:インポッシブル」シリーズにも関わることになる。

監督をした3作は脚本もマックQ自身が担当している。複雑に入り組んだ構造を持つ「ユージュアル・サスペクツ」の脚本家だけに、ストーリー性も高く、アクションシーンだけが売り物の作品とはなっていない。
撮影現場でのクリストファー・マッカリー監督(右)とトム・クルーズ。映画「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」は7月21日(金)より全国公開(c)2023 PARAMOUNT PICTURES.

撮影現場でのクリストファー・マッカリー監督(右)とトム・クルーズ。映画「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」は7月21日(金)より全国公開(c)2023 PARAMOUNT PICTURES.


製作および主演のトム・クルーズとのタッグも息ぴったりで、「ミッション:インポッシブル」シリーズをこのようなビッグコンテンツに仕立て上げたのは、マックQの功績が大きいかもしれない。彼は次のように語る。

「私たちは常に、映画というものを食し、眠り、そして呼吸しています。別々に、そして一緒に得たすべての知識を絶えず取り入れ、自分たちの能力を超えるもの、これまでやってきたことを超えるものに活かそうとしているのです」

ちなみにタイトルにある「デッドレコニング」とは、古い航海用語。マックQの言葉を借りれば次のような意味となる。

「航海術において、最後に確認された位置情報のみに基づいて航路を計算することで、基本的には盲目的に航海していることになります。これはイーサンだけでなく、何人かの重要な登場人物のメタファーともなっています」

前作の「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」のときにも、その当時56歳だったトムが、いつまでこの実行不可能な「ミッション」を続けるのかが大いに気になると触れた。

しかし、今年61歳になるトム・クルーズは、最新作の「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」でも、これまで述べてきたように以前にも増した難易度の高いアクションシーンを披露している。来夏公開予定の「PART TWO」では、さらに身体を張ったトムの新たな挑戦が期待できそうだ。

連載 : シネマ未来鏡
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文=稲垣伸寿

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