宇宙

2023.07.18

ホテルサイズの小惑星、地球接近の2日後に発見

Getty Images

その小惑星は、過去100年間で地球に落下した隕石としては最大の被害を出した2013年のチェリャビンスク隕石と同じ方向からやって来たが、その大きさは3倍と推定される。チェリャビンスク隕石と同様、誰にも気づかれることなく飛来した。

今回の小惑星は幸いにも地球をかすめただけだったが、それでも人類の大きな「死角」を改めて浮き彫りにした。

小惑星「2023 NT1」は、7月13日に地球に最接近した2日後の15日に発見された。つまり、天文学者や科学者がその存在を初めて認識したとき、地球からはもはやその後ろ姿しか見えていなかったのだ。

この小惑星が早期に発見できなかったのは、太陽の方向から地球に接近したためだ。これは、2013年に誰にも気づかれることなくロシア上空に飛来し、空中爆発の衝撃波によってガラスや壁を破壊、数百人を負傷させたチェリャビンスク隕石と同じだ。

これは人類の惑星防衛システムの既知の欠点であり、米航空宇宙局(NASA)はこの欠点を埋めるるべく、宇宙望遠鏡「NEO(地球近傍天体)サーベイヤー」の打ち上げを計画している。欧州宇宙機関が2030年代に計画しているNEOMIRも、地球近傍小惑星の早期警戒システム構築に役立つだろう。

チェリャビンスク隕石が大気圏に突入したときの大きさは約20メートルと推定されているが、2023 NT1の大きさはその3倍とみられる。これは、ニューヨークのジョージ・ワシントン・ホテル(現フリーハンド・ニューヨーク・ホテル)やアイダホ州議会議事堂に匹敵する大きさだ。

この大きさの天体が直撃したらどうなるかを知るためには、太古の時代までさかのぼる必要がある。有名なアリゾナのバリンジャー・クレーターは、これより少し小さな小惑星が5万年前の更新世に衝突した際に形成された。当時の具体的な被害状況はわからないが、隕石自体が瞬時に蒸発し、雷や衝撃、核爆発のような極限的な圧力の衝撃でのみ生成される珍しい鉱物を残したと考えられている。

ESAは、幅30~100メートルの地球近傍小惑星が約100万個あると推定しており、その98.9%は未発見だ。

これらの小惑星の大部分は、太陽を回る軌道上で地球との距離を保っているようだ。だが2023 NT1は、地球から約9万5000kmの距離に迫り、大型人工衛星の周回軌道にも近づいた。これは人間の尺度では十分な「余裕」ある距離だが、宇宙の尺度では非常に近い距離だ。

地球にこの程度に接近する小惑星は毎週発見されているが、2023 NT1は過去1年間で確認された中で最大級だ。

幸いなことに、今回の小惑星は既知のものとなったため、次回の接近時期は事前に予測できるはずだ。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事