宇宙

2023.06.08 14:00

NASAの「黄金の小惑星」探査機、10月打ち上げの準備整う

直径226kmの小惑星プシケの想像図(NASA/JPL-CALTECH/ASU)

直径226kmの小惑星プシケの想像図(NASA/JPL-CALTECH/ASU)

2023年10月は宇宙ファンにとって、なかなかの月になりそうだ。北米で驚異の「金環食」が見られるだけでなく、金属に富む小惑星プシケの探査機打ち上げも実施される予定だ。

プシケを英語読みした「サイキ」と名付けられたこの探査機は当初、2022年9月に打ち上げ予定だったが、開発とフライト・ソフトウエア試験の遅れにより延期された。米航空宇宙局(NASA)の元幹部A・トーマス・ヤングが率いる独立審査委員会による2022年11月の報告書では、NASAジェット推進研究所(JPL)の組織上の問題も打ち上げ延期の一因になったことが指摘された。

打ち上げに青信号

しかし同じ委員会からこのたび、朗報が届いた。同ミッションが問題を修正し、打ち上げのめどがたったとのことだ。

同委員会は最新レポートで、「JPL組織全体とカリフォルニア工科大学の成果にはとても感心した」と説明。「JPLのディレクター、上級幹部らによる包括的対応は『ワールドクラス』と言える」とたたえた。

2022年12月8日、ケネディ宇宙センター近くのAstrotech Space Operations Facilityのクリーンルームで公開されたサイキ(NASA/Ben Smegelsky)
2022年12月8日、ケネディ宇宙センター近くのAstrotech Space Operations Facilityのクリーンルームで公開されたサイキ(NASA/Ben Smegelsky)

プシケの謎

火星と木星の間にある小惑星帯に位置するプシケは、直径226kmで縦方向に自転している。その反射状態から見て、大部分が鉄、ニッケルあるいは金で構成されているとみられる。大きな衝突によって惑星のコアが宇宙に飛び出して生まれた珍しい天体だと考えられている。

プシケの価値を計算すると、1000京ドルに達するかもしれないとまで言われている。これは2023年の世界の国内総生産(GDP)の合計約105兆ドルを遥かに上回る額だ。

打ち上げ計画

サイキは、2023年10月5~25日の間にフロリダ州ケネディ宇宙センターの39A発射施設からSpaceX(スペースX)のロケット「Falcon Heavy(ファルコン・ヘビー)」で打ち上げられ、火星近傍をフライバイ(接近通過)することでその重力から推進力を得て、2029年8月にプシケに到着する予定だ。その後26カ月間軌道を周回し、さまざまな高度から観測を行う。

現在ケネディ宇宙センター近くのAstrotech Space Operations Facilityに保管されているサイキは、今月中に最終組立て、試験、および打ち上げに向けた作業を開始する。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫・編集=遠藤宗生

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