メキシコ・ユカタン半島沖の領域に対する直径10kmの小惑星の高強度、高温の衝突によって、気化した岩石が生成された。衝突はインパクト・ウィンター(太陽光遮断による寒冷化)を引き起こしただけでなく、まったく新しい鉱物に富む微小な珪酸塩の小球を作り出すきっかけとなり、小球は最終的に地球全体で見つかっている。
5月に行われた欧州宇宙生物学学会の隔年例会で発表された最新研究は、ユネスコ世界遺産地であるステウンスの断崖で発見された小球の詳細な分析結果を報告した。現地はデンマーク東海岸にある全長12kmの露出した堆積層の崖で、小惑星衝突をきっかけに生成された古代の小球が存在している。
それらの小球が極めて特別である理由は、まったくの偶然によって自然に生成されたからだとスウェーデン・MAX IVシンクロトロン放射光施設およびストックホルムのスウェーデン自然歴史博物館で研究を行なうルンド大学の化学者スーザン・ナザーティはいう。彼女によると、ステウンスの断崖で見つかった小球は、ユカタン半島付近のものよりずっと後に形成されたものであり、チームはMAX IVのさまざまなX線装置を用いて、小球の中の鉱物相を化学的に同定した。
小球はどうやってできたのか?
原子は、遭遇する元素の種類に応じて、特定の結晶や核から異なる鉱物を作り出すとナザーティは説明する。形成されつつある鉱物は高速で回転しているため、ケシの実くらいの大きさの微小な小球が生まれる。中にはもっと小さいものもあるが、衝突からの時間が短いと、小球は大きくなる傾向があり、やや大きめのケシの実くらいになる。これらの小球が興味深いのは、その多くは保存状態がよく、生命が厳しい試練を受けた時代の環境状態に関するヒントを含んでいる可能性があるためだ。
チームはさらに、それらの小球と小球を包んでいた土の化学組成と空間的元素配置も調べた。
これは高温高圧の極めて特殊なケースであり、再現したり作り出したりすることはできないとナザーティはいう。小球の中にどのような種類の鉱物があるのかを見てみたい、そこにはチームが理解しようとしている数多くの興味深い鉱物層があるが、通常、最も多いのはカルシウム、ケイ素および鉄だと彼女は説明した。
それらの小球は岩石蒸気の雲の中で形成し始め、固化して小さな球状になる過程で、当時の大気中の化学組成を捕獲し、維持している可能性がある。世界中で見つかった小球の化学組成を同定することに関心があるのはそれが理由だとナザーティはいう。これは、K-T境界の世界的大量絶滅に寄与した可能性のあるインパクト・ウィンターをより深く理解するための優れた方法だと彼女は指摘した。
現在のところ、小球の化学組成は過去に発表されたものよりも多様性が高いという。小球の化学組成に関する新たな知見を得ることによって、実際に形成された過程の理解を深められることをチームは期待している。小球の形状は多岐に渡り、部分的に溶融状態の小球も見つかっている。
小球の多くは現在もフレッシュなままであり、もし、そこで小惑星物質にあると考えられる化学物質が見つかれば、小球の全世界への拡散がユカタン半島での衝突に起因する地球規模の出来事に関連していることを確認できるとナザーティは話した。
(forbes.com 原文)