実際、われわれがとらえられる最大の差は、見る方角ではなく、地球からの距離によって生じる。遠くを見れば見るほど、宇宙の過去へとさかのぼれて、遠くの天体から放たれる光の量が多ければ多いほど、光の波長は長くなる。そう聞くと、光の量が多ければ多いほど光は偏移し、その光源である天体はさらに速度をあげて地球から離れていくと思う人が多いだろう。それゆえ、もしわれわれがあらゆる方向を探り、「宇宙のどの地点からなら、全方向が均等に後退するのを見られるだろうか」と考えれば、宇宙の中心を突きとめることができるはずだ。
だが、それは正確とは言いがたい。実際にはどのようなことが起きているのか。宇宙の中心に関する最高の科学知識を利用して、今わかっていることを見ていこう。
波長の変化
たいていの人が感覚的に理解していることだが、物体が近づくと、それが発する波動は圧縮されて、頂点と底点との間隔が狭くなるように見える。いっぽう、物体が離れていくと反対の現象が起きる。波動が伸張し、頂点と底点との間隔が静止しているときよりも広がる。われわれがこういった現象を身近で実感するのは音だ。消防車やパトカー、アイスクリーム売りの車が近づいてきているのか離れていっているのかは、音の高低から判断できる。これはどんな波動でも言えることだ。光も例外ではない。われわれはこの動きによる波動の変化を、発見者の名前にちなんでドップラー効果と呼んでいる。ただし光に関して言うと、波長の変化は音の高低ではなく、エネルギーの高低に比例している。光の場合はこうなる。
・長波長になればなるほど、低周波で低エネルギーになり、色は赤味を増す。
・短波長になればなるほど、高周波で高エネルギーになり、色は青みを増す。