ドイツで開催された日本映画祭。現地の反応は?
「現地では大体同じような質問を受けますが、今回『このような映画づくりは、日本で流行っているんですか?』と質問され、とても嬉しかったです。この質問は、初めてでした。『こうしたサステナブルな映画製作は流行っていませんし、世界で初めてです』と答えました。『せかいのおきく』が認められた瞬間だと感じ、よかったと思いました。ドイツでこうしたことを言われるとは、思っていませんでした。
ドイツの人は、映画を通じて環境問題に興味を持ってくださいます。日本では『せかいのおきく』はロマンス映画として受け止められることが多く、環境問題に焦点があてられることは多くありません。しかし、海外では環境問題に焦点があてられます。これが、私自身が日本との違いを感じ、面白いと思っている点です。
また、ドイツではないのですが、他の国の一般女性が私に言った『せかいのおきくは、循環型社会の中でのLoveとHopeの映画ですね』という感想が印象的でした。この映画についての事前情報がないなかで、循環という価値観が根付いている欧州で育った人に、こうした感想を持っていただけたことは興味深かったです」
テーマはサーキュラーエコノミー。制作側の反応は?
「当映画の試みは初めてのものでしたので、みなさん最初は半信半疑だったと思います。一般の人の生活において、環境問題やサーキュラーエコノミーについて身近に話し合う機会はそれほどありません。これは、映画業界の人も同じです。環境問題やサーキュラーエコノミーは自分にとって綺麗ごとで、知識もないし世の中が変わるわけでもないので、苦手だという意見もありました。
とはいえ、映画を製作し公開すると、反応が大きく違うことに気づきました。海外では、環境問題やサーキュラーエコノミーについて言及されます。取材を受けるときも、映画のコンセプトについての質問に答えています。
監督・スタッフ・俳優などすべての製作メンバーは、世界各地の『せかいのおきく』の大きな反響を実感しています。製作メンバーが最初に当映画に抱いていた考えは、いま変化していると思います。
製作メンバーは、海外で多くの人が興味を持ってくださることを体感し、投げかけられる多くの質問に答えるために勉強しているはずです。これは、面白く、いいことです。
当映画にサーキュラーエコノミーというテーマを含めることによって、海外からもまったく違う見方・大きな反応・アプローチを得られたと思います。この点は、製作メンバーにとって驚きであり、視野が広がったのではないでしょうか。
『せかいのおきく』は今後何年も、いろいろな場所で上映できると思っています。この映画は長く持続的に、小学生から大学生まで教科書のような形で伝えていけると思っています。非劇場という形で行政と連携し、『せかいのおきく』をみなさんに楽しんでもらいたいです」