映画「せかいのおきく」プロデューサーに聞く。映画でつくるサーキュラーエコノミーとは

映画『せかいのおきく』企画・プロデューサーの原田満生

「映画は、新しいものだけで撮影するシーンはあまりありません。10年・20年・50年前という舞台設定が多々あり、そういう場合は、新しくつくった材料を古く見せます。
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しかし、もともとある古いものを取っておいて、組み合わせることもできます。組み合わせることは大変な部分もありますが、パーツとして使っていけば、リアリティも増していいなと思い、これまで使用したパーツを以前から捨てずに保管していました。

街中にある古いものを買ったりもらってきたりして、保管し撮影に使い、それをまた保管するということを繰り返した時期もありました。もともと、アンティークは温かみがあって好きなので、いままでやってきたリユースをそれほど特別なこととは考えずに撮影現場に取り入れました。これをリユースと言われれば、そうなんだなという感じです」

実は、原田氏は15年ほど前から映画の撮影現場でリユースしたものを使用してきた。リユースするには、パーツを保管しなくてはならない。コストについてうかがった。
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「基本的に、サーキュラーエコノミーはお金がかかるから難しく、不可能な面があります。パーツのリユースのコストは高く、新しいものをつくって捨てる方が安いです。それでも、いろいろな映画に関わるなかで、使用するパーツも多く、それを保管する場所もあるので、やりくりしています」

回収した糞尿を運搬するのに使用される汚わい船(c)2023 FANTASIA

今後、映画製作で実践していきたい循環型の取り組み

「フードロスに関連して、撮影現場での弁当があります。撮影現場では、基本的に弁当やケータリングサービスを利用します。弁当を利用するにあたって、弁当箱や紙などのごみが出ます。

YOIHI PROJECTの2作目『プロミスト・ランド』は、山を舞台にしています。撮影中、弁当屋さんに弁当箱を持っていって食事を詰めてもらい、同じ容器を弁当屋さんに翌日持っていき、また食事を詰めてもらいました。

これはたまたま、山の中の撮影だったので、ごみは持ち歩けないということから始まりました。でも、これは今後結構活用できるなと思っています。

私は映画のセットなどはリユース用に持ち帰りますが、映画の撮影時にはごみが大量に出ます。朝・昼・晩、撮影現場で食事して紙コップで飲み物と飲むと、さらに多くのごみが出ます。

これは、本当に小さなことですが、小さなことの積み重ねは大切だと思っています。YOIHI PROJECTは、こうしたことを実践していきたいと考えています」

『プロミスト・ランド』の撮影現場では、普通の弁当が大量に積まれることなく、毎日各人の名前の書かれた弁当箱が配られ、「なんか、面白いな」と感じたと原田氏は語った。撮影現場では通常、一食につき50~100個の弁当が用意されるという。
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文=クリューガー量子

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