映画「せかいのおきく」プロデューサーに聞く。映画でつくるサーキュラーエコノミーとは

映画『せかいのおきく』企画・プロデューサーの原田満生

YOIHI PROJECTを立ち上げたきっかけ

「私が病気になって映画の仕事を何カ月か休んだ時期があり、その時ちょうどコロナ禍になり、いままでの価値観が崩壊しました。転換期であると感じるとともに、自分の体も1回リセットする時期がありました。
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映画もコロナ禍で撮れず、残りの人生を映画とどのように向き合っていくかなどを考えている時に、学者の方々と出会って話す機会がありました。そのなかで、環境問題などについて映画をとおして伝えていくことや映画との向き合い方について考え、意見交換しました。

そして、やってみる価値があるのではないかという結論に達し、プロジェクトを立ち上げて資金を調達して、第1弾の映画である『せかいのおきく』の製作に至りました」

世界の自然科学系研究者が参加するYOIHI PROJECT。今後は協働も

「たまたま、自分が住んでいるところで研究者の方に出会い、その方から他大学の研究者とつながりました。

今後は、東京大学と提携して活動していきます。東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部の教育プログラム『ONE EARTH GUARDIANS』と提携し、学生と一緒にプロジェクトについて話し合って企画を立ち上げていく予定です」

環境保全という課題とエンターテイメントを融合。

原田氏は、エンターテイメントとしての映画に長年関わってきた。今回、環境保全という課題と原田氏がこれまで築いてきたエンターテイメントを1つの映画に融合することにおいて、良い点・難しい点・面白い点をうかがった。
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「良い点は、知らないことを知ってもらう機会になるということです。映画は雑誌・新聞・ネットなどの記事とはまったく異なり、伝えるという行為の回数と露出する機会がとても多いため、人に知ってもらう機会が多くなります。頭でっかちでない伝え方であれば、楽しんで笑いながら、知らず知らずのうちに環境問題に触れられることです。

難しい点は、いろいろな人に映画をみてもらおうと取り組んでいますが、映画は基本的にエンターテイメントなので、環境問題に興味がない人や映画に環境問題を求めない人もいるため、対象が偏ってしまうことです。

面白い点は、環境問題に関心がある人と映画人では視点がまったく違うので、出会う人が変わってくる点です。ネットワークも変わってくるため、新しい出会いが多くなり、そこは面白いと思います」


サーキュラーエコノミーをテーマにした理由

「研究者の方から、企画のテーマをいくつか提案されました。江戸時代・うんち・底辺から世の中をみるという映画はこれまでなく、面白いと思いました。このテーマは、根本的にいやだという人もいて、リスクはありましたが、このような視点で循環を時代劇として表現することは面白いのではないかと思いました」

撮影で使用したものは、すべてリユース品

『せかいのおきく』では美術セット・小道具・衣装など、撮影で使用されたすべてのものがリユース品だ。映画業界において斬新な取り組みである「リユース」に至ったきっかけをうかがった。
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文=クリューガー量子

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