・ 等方性:どの方向を見ても平均して同じ性質を持つ
・ 等質性:どの場所も平均して同じ性質を持つ
どの方向を見ても、どの場所においても、物質およびエネルギーが同じだとすれば、宇宙は膨張するか収縮するかのどちらかということになる。このことを最初に明らかにしたのはフリードマン・ルメートル・ロバートソン・ウォーカー計量(FLRW計量)であり、宇宙の膨張(または収縮)を表すフリードマン方程式として知られている。
宇宙に何が存在するかを知り、その量を測定することができれば、この方程式によって過去または未来のある時点での宇宙の性質がわかる。宇宙の構成要素と現在の膨張率さえ知っていれば、以下の答えを導き出せる。
・過去または未来のある時点における観測可能な宇宙の大きさ
・過去または未来のある時点における宇宙の膨張率
・過去または未来のある時点において、宇宙を構成するそれぞれの要素(放射線、通常の物質、ダークマター(暗黒物質)、ニュートリノ、ダークエネルギー)がエネルギーの面でどれほど重要か
ただし、それらがわかるのは、膨張を続ける宇宙においてエネルギー形態が一定の場合、すなわち、あるエネルギー形態(たとえば物質)が別の規則にのっとってはたらく別のエネルギー形態(たとえば放射線)に変換されない場合にかぎられる。過去または未来の宇宙の状態を知るには、宇宙のそれぞれの構成要素が時間および空間とともにどう変化するかだけではなく、どのような状況下で個々の構成要素が互いに別の要素に変換されるかということも理解しなければならない。
今日、観測できる宇宙は以下の要素と割合で構成されている。
・ダークエネルギー:全体の68%を占め、宇宙が膨張または収縮して構造が変化しても、ダークエネルギーが占める割合は一定に保たれる
・ダークマター:宇宙の構成要素で二番目に多い27%を占める。通常の物質と同様に集合してひとかたまりになるため、宇宙が膨張するとダークマターの割合は減少する
・通常の物質:現在は全体のわずか4.9%にすぎず、ダークマターと同様に宇宙が膨張すると割合が減少する
・ニュートリノ:全体の0.1%とごくわずかしか存在しないが、非常に軽量で、興味深い動きをする。現在の宇宙は温度が低く、エネルギー量も少ないため、ニュートリノは通常の物質と似たふるまいをし、宇宙が膨張し大きくなるにつれて割合が減少する。しかし、初期の宇宙では放射線のように光速と同じ速度で移動していて、宇宙が膨張すると割合が減少するだけでなく、波長が伸びるにしたがってエネルギー量も低下する
・放射線:宇宙全体に占める割合はわずか0.01%で、ほとんどないに等しい。通常の物質よりも減少するのが速く、時間の経過とともに重要な構成要素ではなくなった。しかし、ビッグバンの発生から一万年たつまでは宇宙のもっとも主要な構成要素で、きわめて重要な役割を果たしていたことはまちがいない
宇宙の長い歴史において、宇宙を構成してきたのはおもにこの5つの要素であり、いずれも現在まで宇宙に存在しており、高温のビッグバンが起きてからずっと、過去のどの時点でも存在していた(少なくともそう考えられている)。可能なかぎりさかのぼってみても、すべてこの見解と一致している。