健康

2023.07.13

気候変動で根絶された感染症が復活、米国でマラリアとデング熱の患者増加

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米国では7月4日の独立記念日の週に多くの人がうだるような暑さに耐えなければならなかった。世界の平均気温が過去最高を記録し、その後も2回記録を塗り替えた。世界の平均気温は産業革命以前から約1度上昇し、10年ごとに0.2度以上も上昇し続けている。

これは人間の活動だけでなく、マラリアやデング熱などさまざまな感染症を引き起こすウイルスの媒介となる蚊やダニといった動物の地理的分布にも影響を与えている。気候変動は米国では根絶されたとこれまで考えられていた特定の病気の復活を引き起こしている可能性が高い。

米南部におけるマラリア感染

マラリアと聞くと、中米やアフリカ、アジアの赤道地域を連想するだろう。だが米国の温帯地域でも1800年代後半にマラリアが繰り返し流行し、米国では1947年に国をあげての対策が始まってから地域感染がなくなったと知って驚く人は多い。

しかし、気温の上昇や国外旅行の増加、都市化によって、マラリアが再び発生しやすい条件が整っている。実際、米疾病予防管理センター(CDC)はこのほど、テキサス州とフロリダ州で地域感染したマラリアの症例7件を報告。旅行にともなうものでないマラリア感染が米国内で確認されたのは20年以上ぶりのことで、医師や公衆衛生当局者の間で警戒が高まっている。

なぜこうした事態が懸念されるのか。マラリア原虫という寄生虫によって引き起こされるマラリアは生命を脅かす深刻な病気だ。世界では毎年2億4000万人が感染し、60万人以上が死亡している。感染すると発熱、頭痛、体の痛み、嘔吐・下痢などの症状が出ることがある。米国では数十年にわたりマラリアは流行しておらず、集団免疫がない。このため、将来流行しやすく、発症した場合の重症度が高まる可能性がある。
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翻訳=溝口慈子

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