より不運なシナリオ
では、それほど運がよくなかった場合には、何が起こるのだろうか。ツングースカと同レベルの隕石が飛来し、東京やニューヨークといった大都市の上空で爆発するという、最悪のシナリオを想像してほしい。これら両都市とロシアを隔てる距離はせいぜい数千km。一方、小惑星の多くは、1年間にとてつもない距離を移動する。
針葉樹林しか生えないシベリアのタイガ地帯ではなく、ニューヨークという大都市がほぼ破壊されてしまうほどの空中爆発が、何の予兆もなく発生したらどうなるか、想像してほしい。
たとえ起こったとしても、それが地球全体を巻き込む大惨事につながるなんて、大げさだというかもしれない。被害を受けるのは1つの地域に限られるだろうと。
しかし、歴史を振り返れば、ドミノ倒しのような状況はいくつも起きている。ドイツ軍が戦車でポーランドに侵攻して第2次世界大戦が勃発したのは1939年。人類がパンドラの箱を開けて、大陸を隔てた日本に原子爆弾を落としたのは1945年。その間はわずか6年だ。当時はしかも、現代に比べると、物事がずっとゆっくり動く時代だった。
世界は、2001年9月11日からわずか数週間後に始まった地政学的な転換と、いまだに折り合いをつけようとしている。それに、現代社会はいまだもって、(新型コロナウイルス感染症のパンデミックが世界を覆った)2020年3月より前の状態に戻ったとはいえない状況だ。
地球を破滅から救うために
米カリフォルニア州で暮らす人の多くは、もう何十年も前から、巨大地震が発生するかもしれないと、常に気にしている。カリフォルニアの人だけに限らず、地球上で暮らす誰もが、大災害を想定すべきだ。隕石が飛来したり、地震が起きたり、太陽の表面が爆発する太陽フレアが発生したりするかもしれない。火山が大爆発する可能性だってある。そうした事態は、おそらく起きるだろう。しかし、歴史を鑑みれば、最も懸念すべきは、隕石落下による大災害だと思われる。実際に、わずか100年ほどの間に、あわや大惨事という隕石落下が2度も発生したわけだし、恐竜を絶滅に追い込んだのは巨大隕石の衝突だと考えられている。それだけでも、隕石落下を心配するには十分だ。
ということで、2023年の国際小惑星デーを機に、少しだけ立ち止まって考えてほしい。人間の手に負えず、人類の存続を脅かし、自由市場では解決できない事態が起こったらどうなるのかと。
要するに、地球を防衛しなくてはならず、そのためには、さらなる科学的知識と天体望遠鏡、技術開発が必要だ。NASAは2022年9月、無人探査機「DART」を小惑星ディモルフォスに衝突させて軌道を変える実験を実施し、成功を収めた。人類の安全を守る上で重要な成果だ。また、地球近傍の小惑星を観測する宇宙望遠鏡「NEO(Near-Earth Object)サーベイヤー」計画も進行していくだろう(2028年の打ち上げを予定)。
あとは、地球防衛策を探っている間に大惨事が起こらないことを祈るしかない。
(forbes.com 原文)