宇宙

2023.07.08 13:00

木星の最新クローズアップ画像、NASA探査機ジュノーが撮影

遠藤宗生

2023年6月23日にジュノーがJunoCam Imagerで撮影したデータを使用して作成された画像。色は実際のものを再現してはいない(NASA / SWRI / MSSS / TANYA OLEKSUIK © CC NC SA)

米航空宇宙局(NASA)の木星探査機「ジュノー」が最近、木星の雲頂をクローズアップで写した興味深い画像の数々が公開された。

画像は2023年6月23日、ジュノーが52回目のフライバイ(接近通過)を行った際、搭載された2メガピクセル・カメラが取得した生データを基に作成された。ジュノーは地球から6億2800万km離れた木星を周回しており、地球から最も遠く離れたソーラー動力探査機だ。
3つの北極周極サイクロンの誇張、強調された疑似カラー画像(NASA/SWRI/MSSS/NAVANEETH KRISHNAN S © CC BY

3つの北極周極サイクロンを写した疑似カラー画像(NASA/SWRI/MSSS/NAVANEETH KRISHNAN S © CC BY)


データは約34光分(1光分=約1800万km)の距離を、NASAのディープ・スペース・ネットワーク(DSN)を利用して送られてくる。DSNはカリフォルニア州ゴールドストーン、スペインのマドリード、オーストラリアのキャンベルにある3台の大型電波望遠鏡からなるアレイだ。

届いた生データは市民科学者によってダウンロードされ、組み立てられ、着色などの処理をなされて、本記事で紹介した最終画像になった。
NASA探査機、ジュノーが第52回フライバイで撮影した木星(NASA/JPL-CALTECH/SWRI/MSSS/KEVIN M. GILL © CC BY)

ジュノーが第52回フライバイで撮影した木星(NASA/JPL-CALTECH/SWRI/MSSS/KEVIN M. GILL © CC BY)


NASAが11億ドル(約1兆6000億円)をかけて開発し、ロッキード・マーティンが製造したジュノーは、NASAのジェット推進研究所が運用している。2016年7月4日、木星軌道への進入に成功。以来、楕円軌道に乗って、木星の雲頂近くを移動している。

現在の延長ミッションでは、木星の4つの大型衛星、ガニメデ、エウロパ、カリスト、イオの観測が主要目標となっている。ジュノーは現在、木星を32日周期で周回している。
北極周極サイクロンの疑似カラー画像(NASA/SWRI/MSSS/NAVANEETH KRISHNAN S © CC BY)

北極周極サイクロンの疑似カラー画像(NASA/SWRI/MSSS/NAVANEETH KRISHNAN S © CC BY)


これまで2021年にガニメデ、2022年にエウロパへのフライバイを行ってきた。エウロパは、太陽系で地球外生命体を探す宇宙生物学者が注目している。

ジュノーは2023年5月17日に実施したフライバイで、イオをわずか2万2060kmの距離から撮影した。太陽系で最も火山活動が活発な天体であるイオでは、地表を覆っている火山から溶岩が噴出している。
第52回フライバイでNASAの探査機、ジュノーから撮影した木星(NASA/JPL-CALTECH/SWRI/MSSS/KEVIN M. GILL © CC BY)

ジュノーが52回目のフライバイで撮影した木星(NASA/JPL-CALTECH/SWRI/MSSS/KEVIN M. GILL © CC BY)


地球よりやや大きいイオの火山活動の源となっているのは、木星や他の衛星から定常的に受ける引力だ。

ジュノーは新たな拡張ミッションでイオを2回フライバイする予定。2023年12月30日と2024年2月3日に、いずれも1500km以内まで近づく。ただし、今月実施される次の木星フライバイでも、イオの遠景画像を撮影する。
NASAの探査機ジュノーが第52回フライバイで撮影した木星(NASA/JPL-CALTECH/SWRI/MSSS/KEVIN M. GILL © CC BY)

ジュノーが52回目のフライバイで撮影した木星(NASA/JPL-CALTECH/SWRI/MSSS/KEVIN M. GILL © CC BY)


欧州宇宙機関(ESA)は2023年4月、木星氷衛星探査計画(JUICE)の探査機を打ち上げた。同探査機は2034年から9カ月間にわたりガニメデを周回する予定だ。

ジュノーはその頃までには、木星の過酷な放射線環境により損傷し、木星への「死のダイブ」を敢行しているはずだ。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫・編集=遠藤宗生

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