宇宙

2023.07.10

ビッグバン直後、時間は現在より「5倍」遅く流れていた

Getty Images

宇宙誕生から10億年間、時間は今より5倍遅く流れていたとNature Astronomyに7月3日に掲載された最新研究で明らかになった。

アインシュタインの一般相対性理論の重要な予測が正しいことを証明するこの発見は、天文学者が宇宙の彼方を観察するとき、彼らは宇宙が「若かった頃を見ている」だけではなかったことを示した。見ていたのは「スローモーションで動く」宇宙だった。

138億年前にビッグバンによって誕生したと考えられているこの宇宙は、それ以来、膨張を続けている。しかし、膨張スピードは一定ではない。年を経るにつれ、時間の流れが速くなっていると、研究は述べている

宇宙における時間の遅れ

宇宙におけるこの時間の遅れは、190個のクエーサーの研究から導かれた。クエーサーとは、非常に明るい超大質量ブラックホールで、はるか彼方、つまり古代宇宙の銀河の中心にある。

クエーサーは、宇宙が現在の10分の1の年齢のときからの時間の経過を計る時計として用いられてきた。ブレークスルーは、異なる波長の光を使ってクエーサーを研究することで、その「刻み」を標準化できたことだ。

「もしあなたがこの幼い宇宙にいたなら、1秒は1秒のように感じるでしょう【略】しかし、120億年以上未来にいる私たちの立場からは、当時の時間はノロノロに見えます」と、主著者でシドニー大学物理学部およびシドニー天文学研究所教授のGeraint Lewisはいう。


膨張する宇宙

「アインシュタインのおかげで、私たちは時間と空間が絡み合っていること、そしてビッグバン以降、宇宙が膨張し続けていることを知っています」と彼は付け加えた。「この宇宙の膨張が意味しているのは、私たちが観測する初期の宇宙は、現代よりはるかに遅く時間が流れているように見えるはずだということです」

これまで天文学者は超新星を時計として使うことで時間の遅れを測定してきたが、それでできるのは宇宙年齢の半分まで遡った時代の時間の遅れを証明することだけだった。宇宙の初期に存在した超新星を見ることは困難だからだ。

「超新星が一閃の光のように振る舞って観測が容易なのに対して、クエーサーはもっと複雑で、進行中の花火大会のようです」とLewisはいう。「私たちがやったのは、この花火大会を解明し、クエーサーが初期宇宙の時間を測定する基準に使えることを示したことです」

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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