CEOの竹内将高(たけうち・まさたか)は、「自社の強みは営業力」だと話す。竹内は前職のキーエンスで、多くの中小企業や町工場を訪問した。現場では書類が紙で管理されており、問い合わせ対応に手間取ったり、見積もりを出すのに時間がかかったりしていた。
その課題を解消しようと開発したのが「ズメーン」だ。図面に、見積書や生産指示書、納品書などの関連書類を紐づけ、クラウド上で一元管理できる。
最近では、製造業向けのDXツールも増えてきたが、その多くが顧客管理や在庫管理、工程管理など、一部の業務に特化したものだ。結果的にシステムが乱立し、複数のツールを入れることで、かえって業務が複雑になってしまうケースもある。
「ものづくりって、図面ベースなんですよ。町工場はまず図面を受け取り、同じ材質や形状のものを過去に製造したことがあるかどうか検索し、工程や品質や見積りを探します。だから、図面起点で管理できるサービスを作りました」(竹内)
営業を4段階に分け、全員が同じステップを踏む
製造業における中小企業の割合は99%。書類やデータ管理の非効率さ、技術ノウハウの属人化といった課題を抱えていた町工場から、ズメーンは支持されている。反響は数字にも表れており、サービス開始から8カ月で単月黒字転換している。好調なズメーンを支える営業力はどのように生み出されているのか。
「営業の人って、一生懸命自社の商材を理解しようとしますよね。でも、本当に大事なのは、顧客の業界構造を理解することです。相手のビジネスモデルや業界背景を深く理解していれば、課題も明確になり、自社製品がお客さんにとって必要な商品であることは理解できるはず。だから、ズメーンの営業にはまず、業界構造の理解を徹底的にやってもらいます」
自社の顧客を深く理解していなければ、商品を売ることなどできない。この理由から、中途で採用した人材をいきなり管理職に抜擢するといった人事はしていないという。
「営業の仕事には、4段階の階層があると思っています。まずは、売れる人。次に、売り続けられる人。そして、人(部下)に売らせることができる人。最後が、売れる仕組みを作れる人。
中間管理職は3つ目の階層に当たりますが、これは自身が売り続けることができて、かつ、その理由を明確に言語化し、他者にも伝えられる人である必要があります。
他社で営業経験があっても、うちの製品を売った経験がなければ『うちのプロダクトはなぜ売れるのか』の説明はできません。だから、誰であってもこの4階層のステップを一つずつ踏んで行ってもらいます」
全員が同じ深度で顧客理解をし、経験を積み、ステップアップしていくからこそ、成果の出る営業チームが育つのだ。