メタがフェイスブックとの連携を行なっていないのは賢明と言えるだろう。
実名コミュニケーションが基本であるフェイスブックのIDとの連携機能があれば、匿名アカウントが多数を占めるツイッターユーザーの心を惹きつけられるとは思えない。うっかり投稿でFacebookアカウントとの関係性が露呈する可能性もゼロではないからだ。
一方でメタは有数の活発なSNSコミュニティであるインスタグラムのソーシャルグラフは積極的に利用したいと考えているようだ。というよりも、スレッズの設計はインスタグラムの基本的な運用コンセプトをツイッターのシステムに適用し、再構築したような設計になっているからだ。
実際、スレッズはインスタグラムとソーシャルグラフを共有するかたちでサービスが設計されている。スレッズを利用するには、何らかのインスタグラムアカウントが必要(新規作成で構わない)であり、一度紐付けると両サービスのアカウントは不可分となる。
あくまでも推測でしかないが、インスタグラムのサービス設計として「連続する一連の会話(スレッド=糸)」が存在しないことも影響しているのではないだろうか。インスタグラムには会話スレッドがない一方で、議論の行き違いが連鎖することによる憎悪などが生まれにくい土壌がある。
インスタグラムのカルチャー、コミュニティ運用の空気感を、ツイッターライクなコミュニティ構築にも応用したい意図が垣間見える。
「インスタのノウハウ」でツイッターを再構築
閲覧数制限を実施して有料サービスへと誘導してユーザーの不評買うなど、直近のツイッターは収益化に向けてさまざまなトライアルを行なうたびに評判を落とし続けている。メタがスレッズを「インスタグラム程度」の心地よい、また広告運営による無料プラットフォームとして着地させることができるなら、ツイッターの衰退は意外にもすみやかに進む可能性もありそうだ。アカウント作成後、しばらくは見知らぬ人の興味のない投稿がタイムラインに大量に表示される(使用者のフォロー、フォロワー関係やいいね!、再投稿したメッセージの内容、自身の投稿内容などが学習されていないため)など、まだ未完成な部分を垣間見ることもある。
使っている中でフォロー相手の数が増え、フォロワーの投稿が行われるようになるとタイムラインが少しづつ「自分のライフスタイル」に近いものになってくる。
しかし言い換えれば、AI技術によって「心地よいタイムライン」を作ろうとしている証左とも言えるだろう。多い長い歴史の中で「建て増し」を続けてきたツイッターのシステムに対し、インスタグラムの経験も活かしながらゼロベースで構築し直しているスレッズはより洗練されたシステムに進化する余地が大きいはずだ。
ツイッターは閲覧数制限導入における不評に対しても、有料利用者への誘導を続ける姿勢を示しているが「ツイッターをツイッターたらしめている」大量にツイートが流れるタイムラインを支えているのは、大多数の無料ユーザーに他ならない。
まったく新しいコンセプトのSNSとは異なり、スレッズはツイッターの再設計と言い換えることもできる。スレッズの隆盛はツイッターの終わりを、その逆は延命を指し示すものになるあろう。