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2023.07.08 18:00

YOUTRUST岩崎由夏の偏愛漫画『ブラック・ジャック』|社長の偏愛漫画 #13

栗俣:そういった価値観を問いかけてくれるのが『ブラック・ジャック』の人気の一つですよね。「六等星」(第175話)では、事故現場に偶然遭遇した椎竹医師の処置を見たブラック・ジャックが、彼は超一流の腕前であるとひと目で見抜きました。「あの先生ならできるはずだ」と信じる。ブラック・ジャックは自分の価値観をとてつもなく強く信じているんですよね。この点、岩崎さんはどう感じますか。

岩崎:そこがとてもカッコいいんですよね。ブラック・ジャックはもはや助からないであろう患者を相手にする。だからまともな免許を持った医師たちから文句を言われる。「絶対無理だ」とか「なんでそんなことをするんだ」「触るな」と。それに対してブラック・ジャックはいつも「うるさい!黙っておけ!」とか言うんです。自分の腕を信じ、「治る」と心の底から信じているから、それに対してちゃんと物言いができるんだと思います。「結局人間は信じるか信じないかだな」と思うことがすごく多いです。

たとえばスタートアップが成功するかしないかなんて、誰にもわからない。わからないなかで「できないかもしれない」とか「そもそもこれってやる意味あるんですか」みたいに言うのは無意味です。心の底から「私たちはできる。だからやるんだ」と言うことが大事。信じている人にしかできないことってあるなと思います。自分たちのことは信じないといけないし、信じてやるしかないんだと教えてくれました。

栗俣:岩崎さんの事業はいろいろなところにつながっていますよね。周りの、自分を信頼してくれている人たちを力にしたところ。そのあたりは「六等星」に通ずるところがありそうです。
(C)手塚プロダクション

(C)手塚プロダクション


岩崎:実は私の弟も『ブラック・ジャック』が大好きで、「お姉ちゃんのやっている仕事は六等星を探すことだよね」と言うので驚きました。スタートアップを起業してキャリアSNSを立ち上げた動機の根っこには「六等星のように目立たない。でも超優秀な椎竹医師のような人材を見つけたい」という思いがあるのです。

星には一等星から六等星まであるじゃないですか。それに対してピノコが「六等星ってほとんど光ってないのは小さいからなの?」と問いを投げると、ブラック・ジャックが「いや、遠くにあるだけなんだ。もしかしたら一番大きいのはあの六等星かもしれないよ」みたいな感じで終わるんです。天才ですよね、あれを描けるのは。六等星みたいな人はたくさんいると思います。そういう人は勝手に目立っていくんじゃないかな、と思っています。まわりの人たちは見ているんですよね。「そういう世界を作りたい」と思ったのも起業した理由のひとつです。
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インタビュー=栗俣力也 文= 荒井香織

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年6月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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