教育

2023.07.02 08:30

子供のプライバシーを無視、「シェアレンティング」が生む2つのリスク

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ソーシャルメディアが社会に与える影響、中でも立場が弱く傷つきやすい子供たちや青少年にどのような影響を与えるかについては、科学的な視点から解明する取り組みが続けられている。学術誌『International Journal of Environmental Research and Public Health(国際環境研究公衆衛生ジャーナル)』に2022年に掲載されたレビューでは、子供や青少年のソーシャルメディア利用に関する研究68件以上を抽出し、未成年による制限なしのSNS利用には以下のような大きなリスクがあることを明らかにした。

・うつ
・食生活に関する問題
・心理的問題
・睡眠障害
・依存症
・身体活動の低下
・オンライングルーミング・性犯罪被害

ソーシャルメディアが子供に悪影響を及ぼす可能性があることは明らかであり、子供が責任を持って利用できない場合は、その恐れが高まる。だが、もしSNSへの投稿を決めたのが子供自身でなかった場合はどうだろうか。親が子供の個人情報をインターネット上で必要以上に公開・共有する「シェアレンティング」は、子供たちのプライバシーやアイデンティティーにどのような影響を与えるのだろうか。

英バークレイズ銀行は2018年の報告書で、ミレニアル世代の親によるシェアレンティングの結果、個人情報を悪用した詐欺で生じる年間の損害額が、2030年までに9億ドル(約1300億円)近くに増加すると試算。オンラインで子供の生活を共有している親は、SNSでは誰もがやっているという「誤った安心感にだまされる」ことが多いと指摘した。

この誤った安心感と、わが子を「見せびらかしたい」欲求によって、若い親の多くが知らず知らずのうちに子供に関する重要な情報をいくつも漏えいしてしまい、それが悪用される恐れがある。無害に見えるかもしれないが実は危険な個人情報には、以下のものがある。

・フルネーム
・年齢
・生年月日
・自宅の住所
・学校名
・ペットの名前
・写真

個人情報の盗難リスク以外にも、シェアレンティングによって子供に次の2つの精神衛生上の悪影響が及ぶ恐れがある。

#1. 親子関係に亀裂が生じることがある

学術誌『Children and Youth Services Review』に2019年に掲載された研究結果によると、思春期の子供の多くはシェアレンティングに反対しており、その目的が周囲からの印象を良くすることだと感じた場合は特にその傾向が強かった。この研究では、シェアレンティングに対する青少年の最も一般的な意見は「恥ずかしい上に役に立たない」というものだと判明した。ただし、親の動機が情報の保存だった場合は例外だった。
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編集=荻原藤緒

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