教育

2023.07.02 08:30

子供のプライバシーを無視、「シェアレンティング」が生む2つのリスク

遠藤宗生
これまでの研究で、両親との関係(および子育てのスタイル)が、子供の全体的なウェルビーイング(身体的・精神的・社会的な健康と幸福)にとっていかに重要かがわかっている。だからこそ、子どもたちが搾取されたり、ネット上で自分がどのように表現されるかについて発言権がないと感じたりしてはならないのだ。

シェアレンティングをしようとする親は、その動機となっているものが何かを意識しなければならない。自分の印象を良くしようとしたり、子供の生活を通じて自身の承認欲求を満たしたりするのではなく、子供のウェルビーイングとプライバシーを優先すべきだ。オンラインでの共有、本人の同意の有無、子供自身の意向の尊重について、オープンで誠実なコミュニケーションをとることで、より健全なデジタル習慣を育み、良好な親子関係を維持することができる。

#2. 子供同士の不健全な比較や不安の原因になる

思春期のソーシャルメディア利用が、社会的比較(自分を周囲と比較すること)につながることはよく知られている。2022年に学術誌『The Journal of Psychology(心理学ジャーナル)』に掲載された研究論文では、インスタグラムを頻繁に利用している思春期の子供には、不健全な形で仲間と自分を比較する傾向があり、それが感情の感受性に影響する可能性があることが示された。

シェアレンティングにおいては、子供たちがSNS上で存在感を誇示するために自ら計画したり戦略を練ったりすることはないかもしれないが、それでも社会的比較の影響はさまざまな形で現れると考えられる。

・親は「いいね」を多く獲得し、たくさん共有してもらいたいがために、子供を必要以上に追い詰めてしまうかもしれない。
・子供は、良い成果を出さなければいけないというプレッシャーを内面化し、常にソーシャルメディアの評価基準を通じた評価を求めるようになるかもしれない。これは、子供の自己肯定感や自尊心に悪影響を及ぼす恐れがある。
・共有された他の子たちの生活と比較されることで、子供が自分はネット上の仲間より程度が低いと感じ、劣等感を抱いたり自意識がゆがんだりしかねない。

まとめ

シェアレンティングが生む影響に気を付け、研究結果や専門家の知見に基づく最新情報を知ることで、ミレニアル世代の親は、責任ある形でシェアレンティングを行える。子供のプライバシーを尊重し、ウェルビーイングを守り、ネット社会で子供が成長し活躍できるようなデジタル環境を目指したいものだ。

forbes.com 原文

編集=荻原藤緒

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