3年で130社のスタートアップ誕生 京都府が「IVS」参戦で狙う次なる飛躍

IVS京都 実行委員会のメンバー。一列目の右から二番目に座るのが中原真里氏

京セラや村田製作所、オムロンなどグローバル展開をする企業を続々と輩出してきた地、京都。2020年からは本格的なスタートアップ支援を進めてきた。
 
その取り組みの成果で、京都は都道府県別で、2020年に104億円だった資金調達額が、2022年には約2.5倍となる264億円となり、全国で第4位に。3年で府内のスタートアップ企業の数も130社ほど増えた。
 
そして京都府は、今年6月28日から3日間にわたり開催される、国内外のスタートアップや投資家が集うイベント「インフィニティ・ベンチャーズ・サミット(IVS)」に実行委員として参画。IVSは2007年から始まったが、行政が実行委員として関わるのは珍しいという。
 
目玉であるローンチパッド(スタートアップ14社のピッチコンテスト)の優勝企業には、1000万円の賞金を提供する。
 
京都府は、IVSと手を組むことで、どのような効果を狙っているのか。京都府商工労働観光部ものづくり振興課 課長補佐兼スタートアップ支援係長の中原真里氏に聞いた。

毎年新たに50社の創出

──京都府では2020年から本格的なスタートアップ支援を開始していますが、経緯はどのようなものだったのでしょうか?
 
従来から大学連携によるライフサイエンス分野やロボット産業を中心にベンチャー支援には取り組んでいました。2019年に国がスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略を発表したタイミングで、府としてもより多角的な支援に取り組むため、2020年4月にスタートアップ支援部署を発足させました。
 
──具体的にはどんな取り組みを進めてきたのでしょうか?
 
初年度は、まず起業の数を増やしていくことに焦点を当て、アクセラレーションプログラムや先輩起業家との交流会など、起業創出につながるプログラムをたくさんつくっていきました。
 
次年度の2021年に取り組んだのは、投資家など起業家を支援する人たちの層を厚くしていくことでした。ベンチャーキャピタリスト(VC)やスタートアップ事業のノウハウを持っている人たちは、東京を中心としたエリアに集まっているので、投資機関やIVSのようなスタートアップコミュニティの方など、首都圏で支援機能を持つ人たちとの繋がりを深めていきました。
 
──まずはネットワークづくりに注力したんですね。
 
はい。そうして起業家支援と支援者ネットワークの素地ができた2022年度には、協業支援も始めました。スタートアップがスピーディに社会的インパクトを保っていくためには、協業が欠かせません。それぞれの分野でシェアを持つ大企業と繋がれるよう、取り組んできました。
 
その結果、2020年当時は府内で300後半ほどだったスタートアップの数は、現在510にまで増えています。多い年では、年間約60社の創出ができている状況です。

海外まで視野に入れた参画

──府内のスタートアップには、どのような企業が多いのでしょうか?
 
京都らしいのは、約半数が大学発のスタートアップだということです。再生医療や半導体、創薬などさまざまで、他県と異なり製造業が多いのも特徴です。
 
こうした府内の成長企業を知ってもらおうと、いままでは京都府から首都圏の投資家などにプロモーションすることが多かったのですが、昨年頃からはむしろ先方から連絡をもらうことが増えています。
 
「新しく生まれた企業情報をいち早く知りたい」といった声も多く、すぐに投資へと結びつかなくても、注目度は上がっている印象です。
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文=露原直人

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