海外

2023.06.28

米ノマドに人気 「仕事が捗る物件」揃うAnyplaceとは

アメリカではコロナ禍を契機にリモートワークが定着した。GAFAなどの企業を中心に一部ではオフィス回帰の動きもあるが、米不動産調査会社「CBRE」によれば、オフィスの空室率は全米で17.1パーセントに達しており、これは約30年ぶりの高い数字だという。
 
そうした状況下、デジタルノマドを中心としたリモートワーカーの注目を集めているのが、日本人起業家の内藤聡が運営する「Anyplace(エニープレイス)」だ。
 
同サービスは、リモートワーク環境を整えたサービスアパートメントを、30日単位から利用することができるというもの。物件は、サービスを運営するAnyplace社(本社サンフランシスコ)が数室から数十室一棟を借りあげる形で、全米4都市で約100室を展開している。
 
Anyplaceのユーザーの多くは、それまで利用していたホテルやAirbnbから移ってきているという。その理由とは何なのか、同社CEOの内藤聡に聞いた。

2022年に事業を一本化 

Anyplace社は2015年にサンフランシスコで創業し、2017年からホテルなどの空き部屋を賃貸として貸し出すマーケットプレース事業を行ってきた。展開地域は全米をはじめとする世界450都市に及んだが、コロナ禍による外出自粛によりホテル利用が減少し、売り上げもそれまでの半分になったという。
 
ただ、それと同時に進み始めたのが、企業のリモートワーク移行だった。在宅ワークではなく、ホテルやAirbnbを転々としながら働く「ノマドワーカー」を選ぶ人が増えていくなかで、内藤は次のような話を耳にした。
 
「友人の1人が、Airbnbで家を1カ月から2カ月借り、仕事をするというスタイルに変えていたのですが、デスクやイスは自分で持ち込んで仕事環境を整えていると言うんです(笑)。それで滞在先の環境整備にペインを抱えている人は、結構いるのではないかと思いました」
 
そこで内藤は、数軒のアパートを借り、デスクや椅子、ウェブカメラ、Wi-Fi環境を整え、新たなサービスの運用を開始した。住人を募集するネットの掲示板やAirbnbへ物件を掲載すると、すぐにユーザーが集まった。
 
2021年4月からサービスを開始すると、7カ月で売り上げは1億円を突破し、2022年は前年比2.7倍に成長。2023年は14億円の売り上げを見込んでいる。
 
2022年には完全に事業をAnyplaceに一本化した。
 
現在は、サンフランシスコ、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンディエゴの4都市でこのサービスを提供している。最近ではノマドワーカーだけでなく、コンサルや弁護士、撮影プロダクションといった長期出張者による利用も増えているという。
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文=露原直人

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