海外

2023.06.28 08:15

米ノマドに人気 「仕事が捗る物件」揃うAnyplaceとは

仕事と生活でハイレベルな物件

では、Anyplaceを使うユーザーはこのサービスのどんな面を評価しているのか。
 
特に大きい要素の1つは厳選された物件だ。Anyplaceが提供するのは、ラウンジやプールがつき、アメニティが充実している「高級アパートメント」のみ。部屋からの眺望やコンシェルジュの質、そのような住環境についてはレビューサイトで調査をしているという。
 
リモートワーク環境に関わるものはすべてSNSで評価を調べ、よりよい製品が見つかれば入れ替れていくという改善を繰り返してきた。ソファやベッドといった家具についても、同様に高い評価を得ているものだけを採用している。仕事環境だけでなく、住環境もハイレベルなのが、Anyplaceが選ばれる理由だ。
 
「ホテルやAirbnbは、チェックインするまで、リモートワークがスムーズにできる環境かどうかわかりにくいのです。利用者にとって、きちんとしたデスクはあるか、Wi-Fiは迅速なのかといったことを調べるのはストレスです。
 
特にAirbnbの場合は、そのクオリティはホストによるので、ユーザーは選ぶのにも時間がかかる。その点、Anyplaceは仕事・生活環境ともに良いという保証があるから、利用者からの信頼を得ています」
 
Aibnbに掲載した物件には、現時点で118件のレビューがつき、平均評価は5点満点中4.9。利用者の満足度の高さがうかがえる。カスタマーサービスも万全で、利用者の困りごとにはメッセージで即対応する体制が整っている。

Anyplace CEOの内藤聡

Anyplace CEOの内藤聡


他の企業で、おしゃれな家具を揃えたマンスリーアパートを展開するところもあるが、「仕事環境にこだわっているのはAnyplaceだけ」と内藤は強調する。

「スポンサード物件」を検討

ただ、改善の余地はまだ多くあるといい、実際にユーザーからは「買い物のリクエストやヨガ教室の予約など、生活に関わるタスクを依頼できるようにして欲しい」というような新たな要望もあがっている。そのため、今後は「よりパーソナライズした体験をしてもらえるようにしていく」と内藤は言う。
 
新たなアイデアとして「スポンサード物件」の構想もあるそうだ。前述したように、Anyplaceの利用者は最低1カ月から滞在するため「メーカーと提携し、特定企業だけの製品を揃えた部屋を設置すれば、PRにもなるし、ユーザーも仕事や住環境にこだわる人たちなので相性がいいのでは」と内藤は考えている。
 
目下、Anyplace社が目指すのは提供部屋数や展開拠点の拡大だ。6月27日には、1000万ドル(約14億円)の資金調達(うち約3億円は融資)を発表した。LAUNCH Fund、CapitalX、Gaingels、Riverside Venturesなど米国のVCに加え、三井住友海上キャピタルやDelight Venturesといった日本のVC、その他複数人の個人投資家から出資を受けた。
 
Anyplaceは物件オーナーへの賃料の支払いが必要となるビジネスモデルのため、多くの資金を集める必要がある。ただ、ユーザーの多くは「良い仕事環境にはお金を払う人たち」と内藤は言う。利用者の数ではなく、単価の高いユーザー1人1人に対して、高い満足を提供し続けることが今後の事業展開のカギとなる。

文=露原直人

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