個人消費は堅調
米国の賃金上昇率は、5%を超えている時期が11カ月続き、足元でも4%を超えている。ただ、消費者物価指数が4%台であることを考えれば、物価上昇率に賃金上昇がギリギリ追いつけているかどうかといった水準だろう。いつ消費が腰折れしてもおかしくないような物価高だ。一方で、消費者が商品購入にどれだけお金を使ったかが分かる個人消費の動向が判断できる米小売売上高を確認してみると、5月のデータは前月比で予想外に増加している。上記で言及してきたように、経済状況を巡る問題は増えているものの、いまだ、消費需要の底堅さが示されている。
便乗値上げのなかでも、米国の消費意欲は衰えていない点は、景気を占ううえで一つの安心材料となっている。消費が意欲的である限り、企業業績も底堅い推移が期待できる。
日本で「強欲さ」は馴染みにくい
一方で、日本も値上げが続いているものの、便乗値上げと言われる強欲さは海外に比べると少ない。理由は、日本では賃金上昇がまだ確認できていないため、企業もコスト上昇分の値上げはできるが、どんどん強気に値上げすることはためらわれるのだろう。欧米では賃金上昇を伴う物価高を抑え込むために、利上げで経済を冷やしている一方で、日本だけは世界でぽっかりと浮いたような状態だ。
賃金上昇はまだ始まったばかりで、物価高も続いているものの、継続的に2%を超えるような状況ではない。こうした弱い経済状況では利上げなどできず、金利緩和を継続している。周りの雰囲気を確認しながら、少しずつ値上げに慣れていく日本を見ていると、強欲さというものが馴染みにくい。そういった日本の国民性もあるのかもしれないと思う。