経済

2023.06.27

欧米で企業による「強欲なインフレ」進む 日本の行方は

世界的なモノの値段の上昇が問題となり、各国は利上げによって対処している。米国の消費者物価指数は4%台まで低下してきたものの、ここから一段とインフレを抑え込めるかどうか、予断を許さない推移だ。

欧州の5月の物価上昇率(前年比同月比)は6.1%、英国は8.7%で、依然として物価高が続いている。それぞれの政策金利は米国5.25%、欧州3.75%、英国5.0%だ。特に、6月22日にイギリスの中央銀行であるイングランド銀行が政策金利を現在の4.5%から5.0%への引き上げはサプライズとなった。

積極的に利上げをしているにもかかわらず、インフレを抑えこむことに苦戦している要因として、企業の便乗値上げが指摘されている。そして便乗値上げによるインフレを「グリードフレーション(強欲インフレ)」と呼ぶ。ウォールストリートジャーナルの報道によると、2020年から2022年にかけて、米国企業が価格を引き上げた金額の3分の1は、企業利益の増加に繋がっており、半分程度は賃上げに繋がっているとしている。つまり、値上げによって企業がしっかりと儲かっているのだ。

値上げが企業業績を底上げ

米国や欧州の株価が好調な背景には、足元の景気後退懸念よりも企業の値上げによる業績好転を評価しているとも言える。広範なインフレを口実とした便乗値上げだとしても、50%が賃金上昇に還元している点は、日本から見れば驚きの数字だろう。

懸念点もある。各国の中央銀行が積極的に利上げをしながらも、景気を完全に腰折れさせないようにコントロールしながらの金融政策を進めている。しかし、民間企業でどんどんと便乗値上げが進んでしまえば、中央銀行のコントロールの範囲を超えてインフレが進んでしまう可能性がある。思ったよりもインフレが続いてしまうと、粘り強く利上げをしなければならず、結果的に景気を腰折れさせてしまうといったシナリオもある。

さらに付け加えるならば、今年3月の米国の銀行破綻により、一部では貸し渋りも続いている。銀行からの借入ハードルが高くなることで、間接的に企業に対して利上げが行われているような影響が出ているとも言われている。中央銀行が金利を引き上げている表面的な数字以上に、経済状況は複雑だ。
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文=馬渕磨理子 編集=露原直人

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