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ニューヨーク在住ジャーナリスト / NYC-based Journalist

ⒸMike Cohen(フォーブスジャパン8月号より)

リーマン・ショックの裏側を描き、世界的評価を受けた『リーマン・ショック・コンフィデンシャル』の著者、「ニューヨーク・タイムズ」のトップコラムニストである、アンドリュー・ロス・ソーキン氏から見た「バフェット」とは―。
 
「信頼」を何より重んじるウォーレン・バフェットが最も信頼する米国きっての金融ジャーナリスト、アンドリュー・ロス・ソーキン。
「フィナンシャル・タイムズ」紙の2010年年間ベスト・ビジネスブックに選ばれた『Too Bigto Fail(邦訳『リーマン・ショック・コンフィデンシャル』早川文庫)』をはじめ、多く著がある。

HPのコンパック買収、IBMのPC製造部門のレノボへの売却など、多くのスクープを連発してきた。
現在は、「ニューヨーク・タイムズ」のコラムニスト兼主要経済専門局CNBCの共同アンカーを務め、米メディア業界専門データベース会社ゴーカナ・グループから、2年連続で「最も影響力のある金融ジャーナリスト」に選ばれている。若きトップジャーナリストは、「投資の神様」をどう見ているのか―。

―米国を代表する金融ジャーナリストであるソーキン氏から見た「バフェット」をお教えください。

アンドリュー・ロス・ソーキン(以下、ソーキン):少なくとも米国の現代史において、彼のような投資家はいない。まさに「生きる伝説」だ。裏表もない。ウォーレンは、テレビで見るとおりの人だ。カメラが回っていなくても、まったく変わらない。なかには、マイクがオフになると態度が変わる人もいるが、ウォーレンは違う。

投資家としても、彼ほどオープンで気取らず、率直な人はいない。巨額の財を成した投資家はたくさんいるが、大半が、コツを公にしない。だが、彼は違う。年長の叔父さんのように慈愛にあふれているから、好かれるのだ。チャーミングな人柄や(素朴で飾らない)中西部気質も、米国人から愛される理由である。

司会兼質問役のジャーナリストのひとりとしてバークシャー・ハサウェイの総会に参加するようになって、今年で6~7年たつが、印象的なのは、彼の変わらない率直さだ。何時間にもわたって、株主の質問に一つひとつ答える。大半の最高経営責任者(CEO)は、そのようなことはしない。潔く間違いを認める点も希少だ。

企業規模に合わせた投資法にシフト

―今年のハサウェイの総会で、バフェットの発言に、これまでと違う“変化”を感じましたか。

ソーキン:根本的なテーマは同じだが、考え方がシフトしていると感じる。バークシャーが大きくなったためだ。彼は投資法を見直している。(時価総額で世界トップ10に入る)会社の規模を考えると、超大型投資をしないかぎり、際立った成果を上げることができないからだ。

とくに、過去の投資法と大きく違っているのは、未公開株式投資会社(PE)3Gキャピタルと組み、米食品会社クラフトフーズ・グループや米ケチャップメーカーのハインツを買収したことだ。

ウォーレンは従来、PEとの提携や(資産などを担保に資金を調達する)レバレッジを嫌っていた。再建するのではなく、成長する堅実な会社を好んでいたのだが、バークシャーの成長につれて、以前は視野になかった企業にアプローチする方法を考えざるをえなくなっている。

―金融市場のマクロトレンドが変化するなかで、今後のバークシャー、バフェットがどのように動くかについて教えてください。いちばん儲けが出そうなIT業界に投資をしないで大丈夫でしょうか。

ソーキン:これまで、IT業界への投資はIBMの例があるが、サービス企業だからウォーレンも安心して投資をしたのだろう。とはいえ、今後、ウォーレンがテクノロジーに興味を持つとは思えない。
将来、バークシャーの投資マネジャーであるテッド・ウェシュラーやトッド・コームズのふたりが、ウォーレンの見方に影響を与えるかもしれないが、僕にはわからない。

前述したように、ウォーレンは投資法を見直しているが、バークシャーの過去10年間を振り返ると、1970年代から80年代のようなリターンを上げていない。「会社のサイズは敵」だからだ。純利益200億ドル規模に成長した今、巨額の利益を上げるのは、当時よりはるかに難しくなっている。

とはいえ、70年代のようなものすごい運用成績は上げられないかもしれないが、今後も、過去10年間のような成果を上げることはできるに違いない。

肥田美佐子 = 文

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