西条市に日本初の「ゼロエネルギー」ホテル 脱炭素時代のまちづくり

西条市の風景からインスピレーションを得たホテルは、日本を代表する建築家、隈研吾氏による建築設計

ゼロエネルギーと上質な体験を両立する

「ITOMACHI HOTEL 0(ゼロ)」は、日本国内のホテルで初めて環境省が定める最高ランクの「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」認証を取得したことで、大きな注目を浴びている。
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ZEBとは、建築計画の工夫による省エネルギーと太陽光発電等によるエネルギー創出によって、年間消費エネルギー量が大幅に削減された最先端の建築物。同ホテルでは、省エネルギーと創エネエルギーの機能を同時に備えることで、実質的な電力エネルギー消費「ゼロ」を実現した。省エネルギーと創エネエルギーによって、実質的な電力エネルギー消費をゼロとするZEB(ゼブ:ネット・ゼロ・エネルギービル)

省エネルギーと創エネエルギーによって、実質的な電力エネルギー消費をゼロとするZEB(ゼブ:ネット・ゼロ・エネルギービル)


ホテルの企画・運営を行うGOODTIME代表取締役の明山淳也氏は、ゼロエネルギー設計のポイントをこう語る。

「高気密高断熱でエネルギー効率を良くすることが、大きなポイントです。具体的には、断熱材やLow-E複層ガラスを使用して断熱性能をあげる、少ない電力で効率の良いエアコンを使用するなどの工夫があります。照明は、場所によって電力量にメリハリをつけています。

また、エネルギーマネジメントシステム(EMS)を導入し、常に使用状況を把握することで効率的にエネルギーを使用しています」

ゼロエネルギーを叶えるためには多くの制限が生まれるが、それをゲストに感じさせないよう、居心地の良さにはこだわり抜いた。館内インテリアとランドスケープデザインは、渡瀬育馬氏が代表を務めるDugout Architectsが担当。
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西条市の自噴井「うちぬき」や、岩石「伊予青石」をモチーフに、柔らかで優しい色味が採用された。館内では、自動音楽構築システム「AISO」によって、市内を流れる水の音をサンプリングしたBGMも流す。

さらに、自転車持ち込み可能な客室やキッチン付きのコワーキングスペース、多目的スタジオを備えることで、ゲストそれぞれが多様な過ごし方を選択できるようにした。
気軽に滞在を楽しめるコンパクトな客室“HOTELタイプ”。一部、サイクリスト向けに自転車持ち込みが可能な仕様になっている

気軽に滞在を楽しめるコンパクトな客室“HOTELタイプ”。一部、サイクリスト向けに自転車持ち込みが可能な仕様になっている


全室露天風呂付きの客室“VILLAタイプ”。西条市の自噴井「うちぬき」をモチーフにした水の演出が施されている。省電力が落ち着いた雰囲気に一役買っている

長期滞在に重宝するコワーキングキッチン。近くのマルシェで購入した食材で調理をしたり、集中して仕事をしたりするのにも便利だ

長期滞在に重宝するコワーキングキッチン。近くのマルシェで購入した食材で調理をしたり、集中して仕事をしたりするのにも便利だ


「ゼロエネルギーというのは素晴らしい取り組みですが、それを理由にホテルを選ぶ人ってまだまだ少ないと思うんですね。一般的に求められるのは、美味しいご飯や美しい景色、居心地の良さなど、そこでしか味わえない体験です。当社は、ゼロエネルギーの仕組みが既に整えられた上棟直前の段階でプロジェクトに参画したのですが、そこからゼロエネルギーと顧客体験の両立を構築していきました」
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文=佐藤祥子

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