宇宙

2023.06.25 14:00

ミッションで後回しにされがちな「宇宙生物学」にもっと積極的になるべき理由

イラストレーターによる土星のイメージ(NASA)

イラストレーターによる土星のイメージ(NASA)

宇宙生物学は、宇宙における生命の起源、進化、分布そして未来を研究する学問であり、それを最もうまく表現しているのが、フランスの画家ポール・ゴーギャンが19世紀末に描いた作品、『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか(D'où venons-nous ? Que sommes-nous? Où allons-nous?)』であることはおそらく間違いない。かつてパリの株式仲介人だったゴーギャンは、自身の1897年の後期印象派作品を、NASAが宇宙生物学プログラムの信条に採用したことを知ったらさぞかし驚くに違いない。

ゴーギャンの名作の起源はタヒチにある。彼はそこで自分が何者であるかの本質を見つける糸ためと思われる策略にすべてを賭けた。同様に、急成長する若い科学分野である宇宙生物学も、人類の起源を、そして宇宙の生命は私たちだけなのかを理解するために、ゴーギャンとよく似たことを学術分野で行っている。

宇宙生物学はロボットによる宇宙ミッションに関してリスクを回避しすぎではないか?

これは、先にスペインのラ・パルマ島で行われた欧州宇宙生物学学会(EAI)の隔年学会で、ストックホルム大学の宇宙化学者ウルフ・ゲパートに私が投げかけた疑問だ。

科学界は概してリスクを回避しすぎているとEAI会長のゲパートがラ・パルマの学会で私に言った。おそらくそれは、商業と科学の本質的違いに関係があるという。商取引では、リスクと利益をユーロで測れるが、科学では潜在的な科学的利益に金銭的価値を置くことは簡単ではない。

ハイリスクな科学を実行することを多くの人に納得させるのはもっと難しいとゲパートはいう。

問題の一部は、気候変動やますます増える高齢者に対する医療提供といった差し迫った地球の問題がある中で、なぜ宇宙ミッションに投資する必要があるのかという世間の声だ。

このため政治家や当局関係者は、科学に資金を投じないようにという大きな圧力を受けており、それが一定のリスク回避につながっている。失敗する多額の費用がかかるミッションの責任は誰もとりたくないとゲパートはいう。

宇宙生物科学は気候研究にかなり大きく貢献

ゲパートは宇宙生物学会が1999年に欧州の大学、研究機関からなるコンソーシアムを通じて支援する非営利団体として設立されたとき以来、会長を務めてきた。

宇宙ミッションの規模縮小はよくあることで、多くの場合、プログラムの宇宙生物学関連部分が削られるとゲパートはいう。始めは非常に意欲的なミッション計画だったものが、資金調達などの問題で多くの装置が減らされることは珍しくない。
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翻訳=高橋信夫

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