そんな負の面がありながらも、宇宙生物学ミッションには予期せぬ技術的利益を地球に持ち帰ってきた歴史がある。
ゲパートが気に入っている事例が質量分析計、科学的試料の化学組成や質量、構造などを同定するために使用される機器だ。
NASAの火星ミッション、バイキングが実施されるまで、その種の分析機器は部屋いっぱいの大きさだった。しかし、MIT(マサチューセッツ工科大学)の化学者クラウス・ビーマンは、宇宙探査機に搭載できる大きさの質量分析計を製造するという困難な仕事を成し遂げた。人々はデスクトップサイズの質量分析計が可能であることに気づき、同位体代測定から空港の保安検査までさまざまな用途の分析方法に革命を起こした。
『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか(D'où venons-nous ? Que sommes-nous? Où allons-nous?)』。ポール・ゴーギャン(WIKIPEDIA)
宇宙生物学がまだやっていないことで欧州がすべきこと
宇宙生物学の研究と教育、市民理解に協調的アプローチを適用することは、EAIに可能なことであり、成し遂げるべきことだとゲパートはいう。宇宙生物学は単一の国家研究機関が取り組むには多様すぎる分野だからだ。その目的に向けて、欧州全体から250人の主として若い宇宙物理学研究者がラ・パルマに集まって、1週間にわたって発表や気軽な議論を行った。
ゲパートが学生だった頃、物理化学と有機化学の研究機関は互いに話し合うことすらなかったという。しかし、ラ・パルマに集まった若い研究者たちは宇宙物理学とともに育ち、分野にまたがって研究することに慣れているとゲパートはいう。
ポール・ゴーギャンの根本的な疑問に答えることについて
国や団体が多くのミッションに取り組むほど、科学、技術両方の利益を早く得ることができる。NASAがケネディの明快な呼びかけに答えて10年以内に人類を月面に立たせるというゴールに到達したのは、その方法だった。そのためには太陽系のあらゆる部分を往復する何十ものロボットミッションに加えて、遠方の太陽系外惑星で生命の痕跡を検出する真の能力を備えた新しい宇宙望遠鏡がいくつか必要になるだろう。しかし、人類がその課題に全力を尽くさない限り、すべての本質的疑問に答えることはできないだろう。
(forbes.com 原文)