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2023.06.23 09:15

コロナ禍で買い占めたのはわずか6%の人たち パニック購買の実情

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社会情勢が不安定になると、かならず起きるのがスーパーの棚が空っぽになる買い占め。1970年代のオイルショックのときには店に人が押し寄せてトイレットペーパーを奪い合う映像が報道され、買い占めと聞くとそんな光景を連想するのですが、実際に買い占めているのは、ほんの一握りの人たちであることが、明治大学の調査でわかりました。

明治大学は、危機時の衝動的な買い溜め、いわゆる「パニック購買」をする消費者の特性を、その行動とアンケート調査などから分析を行いました。対象としたのは、2020年2月の政府による小中学校の休校宣言、4月の緊急事態宣言の際に発生した、2度にわたる日用品と食品のパニック購買現象です。研究チームはそのときの消費者を、「強くパニック購買する人」、「弱くパニック購買する人」、「合理的に買い溜める人」、「無関心な人」、「通常より少し多くの備蓄をする人」の5つに分類しました。

もっとも多かったのは、少し多く備蓄する人たちで39.2パーセント。合理的に買い溜める人と無関心な人は合計で39.3パーセント。つまり、8割近いひとはパニック購買をしていません。問題は、強くパニック購買する人たちです。彼らは、ウェットティッシュを通常の約22倍、ペット用品を約12倍、トイレットペーパーやお米を約7倍と異常な買い占めを行っていました。しかしその割合はわずか5.8パーセントです。

強くパニック購買する人たちの多くは、普段は日用品や食品をあまり買うことがなく、おもにモバイルニュースで情報収集をし、ネットを使わず実店舗で買うのが好きで、子どもが多い男性ということです。一方、少しだけ多く備蓄する人たちは、日ごろから買い物をして購買経験が豊かで、家族人数が多い女性が中心でした。パニクってバカみたいにトイレットペーパーを買い込んできたお父さんが、冷静なお母さんや子どもたちに責められる光景が目に浮かびます。

この調査から「日用品や食品の購買経験が少ない人は危機時の買い溜めを行いやすい」ことがわかりました。そのわずか5.8パーセントの強パニック購買層がパニックに陥らないようにさえできれば、店の棚から商品が消えて、ほんとうに必要な人が困る事態が避けられそうです。研究チームは「家庭内でも日ごろから日用品、食品を買っているおもたる家事担当者が購買量の調整を行うなど、家族の中で注意喚起していくことが有効」だと指摘しています。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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