そこで研究者たちは、衛星を使った技術(干渉計とGPSによる測定)で地盤のゆがみを測定した過去の研究結果と比較した。直接比較ではないが、これによりニューヨーク市全体の地盤沈下に対する都市の建物の重さの影響を推測することができた。
その結果、市全体の平均的な沈下は年1~2ミリだが、クイーンズやブルックリンのような地域ではもっと大きいことがわかった。論文の筆頭筆者トム・パーソンズは「1年あたり最大約4.5ミリ」と米テレビCNNに語っている。それは大したことがないように聞こえるかもしれないが、世界的に目を向け、過去30年間で海面が98.5ミリ上昇した(年平均3.28ミリ)ことを考えると、その影響はより明確になる。ニューヨークの一部が永久に水没する可能性について、パーソンズは米紙タイムに「避けられない。地盤は沈下し、水は上がってくる。ある時点でこの2つの高さが出会うことになる」と述べている。
こうした現象はニューヨークだけのものではない。2021年に発表された世界的な研究は、地盤沈下しつつある都市では、地盤がしっかりした地域の最大4倍の速度で海面が上昇すると結論づけている。2022年の別の研究では世界の都市人口の約5分の1を占める48の大きな沿岸都市を調査し、そのうちの44都市に海面上昇のスピードよりも速く沈下している地域があることが判明した。
地盤沈下により、すでに数カ国の政府が思い切った対策を取っている。インドネシアは首都をジャカルタからボルネオ島のヌサンタラに移そうとしている(ヌサンタラは目的のために設計される都市で、それ自体が大きな環境問題を抱えている)。
論文の著者らはニューヨークの緊急避難を呼びかけているわけではない。そうではなく「海岸、河川、湖岸に建設される高層ビルは洪水リスクをさらに高める可能性があり、その緩和策も必要だという認識を高める」ことが目的だと書いている。著者らのメッセージが浸透するか、様子を見よう。
(forbes.com 原文)