「サ旅」という言葉を聞いたことがあるだろうか。サウナを目的に旅をすることで、サウナ好きのかいわいではサウナ旅=サ旅と表現する。
先日もマクアケ社内のサウナ好きなメンバーが、富山にサ旅に行ったらしい。「スパ・アルプス」と「高原鉱泉」のサウナでととのってきたと、丁寧な報連相を受けたばかりだ。
かくいう私も「サ旅」が好きである。長崎、宮城に北海道、静岡や島根、広島など、数えればきりがないほどいろいろな場所のサウナ施設を訪れているのだが、最近このサ旅をまた一段とアップデートしていく動きが現れたので紹介できればと思う。
以前このコラムでも少し触れたことがあるが、サウナブームの火付け役となったサウナプロデュースブランドの「TTNE」が、水風呂にフォーカスした新しい地域活性にチャレンジし始めた。
日本には、温泉ではなく、冷泉が豊富に湧く場所がいくつも存在している。要は湧き水だ。温泉に比べて使い道が少なそうにも思えるその冷泉は、サウナ好きの視点から見ると、また違った価値をもつ。なぜなら、最高の「水風呂」として活用できるからだ。
TTNEが注目したのは、大分県九重町に古くからある「寒の地獄温泉」という、いわゆる温かいお湯ではなく、13〜14℃ほどの冷たい水が湧く“冷泉”どころだ。その歴史は古く、開湯186年。江戸時代末期にひとりの狩人が冷たい泉に猿がつかっているのを見かけた。もしやこの猿は傷を癒やしているのではないかと考え、村人たちと共にここを湯船として整えたのが始まりだといわれている。
実際の効果のほどをここで論じるつもりはないが、冷泉の横に薬師如来がお祀りされているところを見ると、“霊泉”として、地元で長い間愛されているのは間違いないだろう。しかしながら、水の温度は14℃。サウナ好きからしたら水風呂にはとてもよい冷たさなのだが、実はこの「寒の地獄温泉」には、サウナがないのだ。古くから愛されている冷泉に合うサウナを新しくつくることで、この冷泉がより高い価値を発揮し、より多くの人に愛され、ひいてはその地域の活性にもつながるのではないか。そう考え動き出したのが、このTTNEなのである。