リリー・フランキーの人生哲学 一番大変なのは、若くして成功すること

リリー・フランキー(Photo by Carlos Alvarez/Getty Images)

個性派俳優として数々の映画やドラマに出演。日本アカデミー賞の優秀主演男優賞(「万引き家族」)や最優秀助演男優賞(「そして父になる」)など多数の受賞歴を持つのが、リリー・フランキーさんです。

その一方で、文筆家としても活躍。脚本、エッセイの他、初の長編小説「東京タワー〜オカンとボクと、時々、オトン」は200万部を突破するベストセラーとなり、映画化もされました。

また美術大学を卒業した画家、イラストレーター、デザイナーでもあり、ラジオのナビゲーターやナレーター、フォトグラファー、構成・演出家など多種多彩な顔を持つ、まさにマルチタレントです。

5年も続いたプータロー生活

そんなリリーさん、実は20代は極貧のプータロー生活を送っていたといいます。

「大学を卒業した後、就職したくないからプータローになったんですが、とんでもない生活でした。もちろん金はない。時には腐ったものにも手を出す。下痢してるのに水道は止まっているから、自分の家でウンコもできない。友達にタカりまくって愛想を尽かされ、軽蔑され、消費者金融に金を借りまくって、そんな毎日でした(笑)」

アルバイトをしようとはしたそうで、当時は紙媒体だった求人アルバイトの情報誌は買っていました。

「これ、いいじゃんとページを折る。ところが、それだけでもうバイトしたような気分になっちゃって。このままじゃヤバいという思考すらも、だんだんできなくなっていきました」

将来のことを考えるなんて、とんでもなかったといいます。それよりも、今日の食事をどうするか。それが何よりの心配事でした。

「そもそもプータローになるとき、オヤジに言ったら、『何でも5年はやらないとわからない』と言われましてね。それでやったんですが、さすがに5年もプータローをやってるとつらくなってきて(笑)。それで働こうかなと。すでに20代も後半になっていました」

大変な20代を送っていたのです。しかし、リリーさんは若い人に、こんなアドバイスをします。

「20代は苦労したほうがいいんですよ。何でも後に楽しいことがあるほうがいいじゃない。いちばん大変なのは、若くして成功しちゃうことです。金もあって、人も集まってきて、いいところに住んで。ところが30代になって、そこから落ちていったらしんどいです。それよりも、ちょっとずつでもいいから、去年よりマシになっていると思えるほうがはるかに楽です」
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文=上阪徹

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