この時、ノイズキャンセリング機能(AirPods Pro2などがつながっている場合は、その内蔵ANCと連携もする)とも連動し、少しずつ周囲の雑音が消されていき、より仮想世界の中へと没頭できるのだ。
「視覚を乗っ取られる」ような錯誤感を緩和する機能も
実にアップルらしい配慮と感じたのは、周囲の環境をカメラで監視し、近くに人がいてこちらを見ている場合、その顔をうっすらと仮想空間に浮かび上がらせてくれることだ。Vision ProはSF映画やアニメの中で、視覚と聴覚を第三者に乗っ取られ、別のどこかにいるような錯誤を起こす感覚に近い体験をもたらしてくれる。やや言い過ぎと思う人もいるだろうが、そう遠くない将来、そうした感覚に陥るレベルにまで技術が進むのではないかと感じさせるに十分な高い質の体験なのだ。
しかしアップルは完全に仮想空間に没入している瞬間にも、現実空間とのつながりを失わないように改良した。それが近くにいる人とのつながりであり、うっすらとこちらを見る人に気づけるようにする機能である。
そこに人を認識し、ユーザーが話しかけるとVision Proはその声を認識して(映画などを楽しんでいるならその音量を下げ)、相手の顔をさらにわかりやすく浮かび上がらせる。しかも滑らかに。話を続けるごとに明瞭に。
FaceTimeでビデオ会議をする際、Vision Proで隠れた自分の顔をVision Pro自身が生成し、表情まで加えて送出してくれる機能も気に入った。これはVision Proが持つToFセンサーとステレオカメラで自分自身の顔をスキャンして作成するペルソナを用いる機能だ。
Vision Proが捉えた視線や表情を、3Dモデリングデータに変換されたデジタルペルソナに表情を加えて送る。顔の前面にしかデータはないが、オンラインコミュニケーションには十分で、極めて自然な表情でコミュニケートできてしまう。