現実空間と仮想空間をなめらかに繋ぐVision Pro
Vision Proの本当のすごさは、ソニーの最新OLEDなどではなく、多様な技術を統合した製品全体の総合的な体験価値の高さとそれを実現できるだけの、極めて複雑な擦り合わせ技術だ。Vision Proの操作は視線追跡と指先のジェスチャーによって行う(Bluetooth経由でキーボードやトラックパッドも利用可能だが)。
視線追跡は明るい画面と暗い画面で中央部を含む7カ所を見つめるだけで終了。瞳孔間距離はセンサーによる自動だ。指先のジェスチャーは、本体よりも前に手があれば、どこで行っても検出される。
2つの指を合わせて話した瞬間がクリック。仮想空間の何かを掴む必要はなく、見つめてジェスチャーするだけだ。指を合わせたまま動かせばドラッグとなり、弾けばフリックと、このあたりはスマートフォンに準じる操作をするのみ。距離センサーもあるため、前後方向へとドラッグすることもできる。
視線入力の正確性は高く、注意して操作する必要性を感じることは皆無だった。
しかし最も驚かされたのは、多くのカメラ映像とToFセンサーの情報を用いて再構築する現実空間の映像だ。もちろん、カメラを通したものであるため、実際に見る像に比べれば色味やトーンカーブに不自然さはある。
しかし、肉眼で見た場合の大きさ、距離、パースなどはかなり正確に再現されており、カメラのつなぎ目も認識できない。このため、Vision Proを装着したまま、他に人がいるテーブルや椅子の置かれた部屋を恐怖感なく歩き回り、テーブルの上にある小さなものも普通に手にとって見ることができる。
高精細なディスプレイもあるため、明瞭とはいえないものの、手元にあるメモを読む程度ならば細かな情報も認識可能だ。ここまで現実空間を見事に再現し、Vision Proのディスプレイで再現しているのは見事という他ない。
この現実空間を的確に再現する能力は、仮想空間のオブジェクトを正確に配置するためにも役立つ。現実空間の机の上に、仮想アイテムがめり込んだり、浮き上がるといった心配が無用かどうかまでは断言できないが、ほとんど心配する必要はなさそうだ。
さらにVision Proには、リラックスできる自然の中など現実から離れて没入したいと思えるシーンが組み込まれており、任意のシーンを選んで現実を忘れ、音楽や映像に身を委ねながら仮想世界に浸ることもできる。