宇宙

2023.06.28 09:30

宇宙一速い惑星風はどこに吹く?

2007年のハリケーン「フェリックス」は、地球での観測史上最大級のカテゴリー5のハリケーンになった。持続的風速は時速165マイル(秒速約74メートル)、瞬間風速はさらに速い。だが、地球全体よりも大きな嵐があって、地球ではとうてい到達しえない風速が存在する惑星もある。

1999年5月にオクラホマ州で発生した竜巻は、史上最大の風速を記録した。このブリッジクリーク・ムーア竜巻の最大風速は時速約302マイル(秒速約135メートル)。地球での最速記録だ。ムーアは14年後の2013年5月にも竜巻に襲われ、懸命な復旧が行われた一帯がふたたび壊滅状態となった。

金星での風速は秒速約112メートル、火星、木星では──

金星は地球からはほかのどの惑星よりも明るく見え、どの惑星よりも地球に近づく。金星の大気を測定すると、金星の風の速度は速くなっている。探査機「ビーナス・エクスプレス」による計測では、最高時速約250マイル(秒速約112メートル)という結果が出た。

2001年夏、火星でも季節は夏となり、火星全体が砂塵嵐に覆われた。砂塵嵐が起きると、ふだん火星の表面で見られる特徴がほとんど、あるいはまったく見られなくなる。砂塵嵐は比較的温度の高い火星の夏に発生することが多いが、ピーク時でも時速約60マイル(秒速約27メートル)を超えることは滅多にない。

探査機「カッシーニ」から放出された小型探査機「ホイヘンス・プローブ」がタイタンの大気圏内に突入した際、高度約120キロメートル地点で検出された風速は、予想を超えただけでなく、タイタンでは前代未聞の時速約270マイル(秒速約121メートル)だった。これは、地球を除く地球型の星における計測史上の最大値になる。

木星の風は、さまざまな高度や緯度で測っても通常時速約200~400マイル(秒速約89メートル~約178メートル)。だが、極の風は時速約900マイル(秒速約402メートル)に達する。これは、木星で観測された最速記録だ。



土星に発生した嵐は、2011年2月23日と24日の11時間(土星の一日)を置いて、1ピクセルあたり64マイル(約103キロメートル)と観測されている。嵐はかなりのスピードで移動するが、土星で最速の風は赤道の高層大気に吹く。その速さは最高で時速1100マイル(秒速約492メートル)に達する。

探査機「ヴォイジャー2号」は天王星と海王星のそばを飛行し、その性質と色、大気、環系を明らかにした。どちらにも環、多数の月、今後の調査が待たれる大気現象、地表現象がある。両者の違いのなかでも特に大きいのが、天王星は自ら熱を発していないのに、海王星は発していると思われる点だ。その理由についてはまだ解明されていない。



海王星の風速は約680キロメートルの高層が最速で、ふだんは時速1100マイル(秒速約492メートル)だが、瞬間風速は少なくとも1600マイル(秒速約715メートル)まで達する。これは、太陽系では最速だ。

親星の正面のHD 189733b惑星で、赤道のまわりに吹く帯状の風は、熱せられた昼側から夜側に向かって、時速5400マイル(秒速約2414メートル)で吹く。昼側は、大気に含まれるケイ酸塩の粒子が光を散乱させるために青く見える。夜側は高温のため深紅に光る。



太陽系外惑星HD 189733bの赤と青の変化によって、この惑星の風が明らかになる。東半球と西半球の相対的な赤方偏移と青方偏移は、大気が循環していることを示す強力な証拠であり、高速周回する高温の惑星の位相変化スペクトルに現れている。時速約5400マイル(秒速約2414メートル)という風速は、太陽系で見られる風を大きく超えている。

翻訳・編集=寺下朋子/S.K.Y.パブリッシング/石井節子

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