そんな新型アバルトをカーライフ・エッセイストの吉田由美が取材した。
久しぶりのイタリアは、新型「ABARTH 500e」の試乗会だった。
「アバルト500e」(アバルト チンクエチェントイー)とは、フィアットの国民的人気車「FIAT 500」の最新モデルで電気自動車(BEV)の新型「FIAT 500e」のアバルト版。
ちなみにチンクエチェントとは、イタリア語の「500」の意味で、日本でも「チンクエチェント」とか「チンク」と呼ばれて親しまれている。とりわけ日本では、アニメ『ルパン三世 カリオストロの城』に登場する旧型の黄色い「フィアット NUOVA 500」がルパンの愛車として有名だが、その最新モデルが「フィアット500e」だ。「500e」の「e」はエレクトリックを表す。
アバルトとは、1949年にカルロ・アバルトによって設立され、フィアット車でレースに参戦したりチューニングなどを行っていたが、1971年にフィアット傘下となり、現在はフィアットのアバルト部門としてチューニングモデルを提供する。日本での人気も高く、販売台数はイタリアに次いで世界2位。サソリのマーク「スコーピオン」がアイコンで、アバルトを愛してやまない女性ファンのことを「スコーピオンナ」というそうだ。
試乗場所はミラノから約70km、バロッコにあるステランティスのテストコース「ステランティス・バロッコ・ブルーピング・グラウンド」。
ここはもともとはアルファロメオのテストコースだったが、今はアルファロメオ、フィアットなどステランティスグループ傘下のフェラーリ、ランチア、マセラティ、アバルトなどイタリアブランドの開発をこのテストコースで行っている。
「アバルト500e」の魅力は、なによりフロントフェイス。特にヘッドライト部分がユニークで、ガソリンエンジンのアバルト500はフィアット500同様、正統派アイドル的な真ん丸お目目だったのに比べ、「フィアット500e」は、上まぶた部分がボンネット部分に隠れ、まるで「チコちゃん」のようなちょっと何かを企んでいるかのような目。これが「アバルト500e」になると上目の部分がアイラインのように黒くなり、目ヂカラアップ。サソリの毒がすでに注入されたかのような、この表情がたまらない。