もう1つ、その直後のソフィが周囲の人たちに協力を呼びかけて父親の誕生日を歌で祝福する場面。カラムは少し高い場所に登っていて、それを仰ぎ見るようにソフィと彼女が声をかけた人たちが祝福の歌を唱和する。
カラムの姿は神のような高みにあり、現実離れしたシーンにも受け取れる。この2つのシーンは、途中で現在のソフィが映された後に置かれているため、彼女の変容した記憶だとも考えられる。
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アカデミー賞の主演男優賞にノミネートされたポール・メスカルの陰翳に富む演技も、「aftersun/アフターサン」という作品を魅力あるものにしている。彼の表情の端々やさりげないセリフのなかに、この作品の最大の重要な「謎」が秘められているからだ。
観客にとってはさまざまな解釈が成り立つ衝撃のラストシーン、父親であるカラムに何が起きていたのか、そしてそれが20年後のソフィにはどう映って何をもたらしているのか、それらを想像しながら物語を振り返るのも、この作品の正当な楽しみ方かもしれない。
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連載 : シネマ未来鏡
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