そうした中、博報堂DYホールディングスの研究開発部門であるマーケティング・テクノロジー・センター(MTC)と、中国の検索プラットフォーム「美団」の広告部門Solid Bitは5月29日、北京、上海、広州、深圳に住む20〜49歳までの男女569人(※1)を対象に、中国人生活者の訪日意欲や訪日意識について実施した調査結果を発表した。
中国人生活者の訪日意欲について、社会環境や実現可能性を考慮せず、調査時点から3か月後の気持ちを端的に表す指標「インバウンド予報指数」は、6月が81.1点。前回(3月82.1点)と比べて引き続き高水準にあり、中国人生活者に継続して高い訪日意欲があることが分かった。特に、同指数は訪日4回以上の中国人生活者において93.2点と高く、この層が全体を引き上げた。
続いて中国人生活者の訪日目的を調べると、最多が「大衆料理を楽しむ」で78.4%。次いで「四季の体感」(77.5%)、「温泉入浴」(77.2%)、「自然・景勝地の観光」(74.5%)、「高級レストランを体験する」(72.9%)、「旅館に宿泊」(72.6%)となり、それらは全て「買い物」(67.4%)を上回る結果に。中国人生活者が、「買い物」よりさまざまな体験を重視して訪日していることがうかがえた。
さらに訪日旅行の際の意識として近いものを選んでもらうと、「行ったことのあるところを再訪」(32.6%)より「行ったのことないところを探検」(67.4%)の方が大幅に高かったほか、「ショッピングを楽しむ」(39.1%)を「いろんな体験を楽しむ」(60.9%)が大きく上回るなど、中国人生活者の好奇心旺盛な訪日意識が明らかに。
一方で、「滞在中に思う存分楽しむ」が9割近く(87.8%)を占めたものの、「帰国後も余韻を楽しむ」は1割程度(12.2%)にとどまったことから、同社は「(中国人生活者が)訪日後も楽しめるような体験設計に、まだ工夫の余地があると考えられます」と課題を指摘した。
また、中国国内で実施した日本に関連する活動のうち、訪日意向の高まりに影響を与えたものを聞くと、最多が「日本のテレビ番組、映画、アニメ、音楽、ゲーム、書籍等を楽しむ」(60.5%)で、続いて「日系ブランドの商品、日本産の食品や飲料等をリアル店舗で購入する」(51.7%)、「日本食、日本の酒を体験する」(49.2%)の順に。日本のコンテンツに触れることや日本に関連する商品の購入が、訪日意欲の醸成につながっていることが見て取れた。
他にも、中国人生活者が訪日中に満たしたい欲求について調査(※2)。五感や感覚的なものを含め「物事をもっと楽しみたい」という「愉楽欲」が74%と最も高く、その後に「簡単・便利で効率的な暮らしがしたい」という「簡便欲」(72.4%)、「自分なりの目標に到達したい」という「達成欲」(66%)、「危機を回避したい、安全・安心な暮らしがしたい」という「安全欲」(63%)、「失敗や損失を避けたい」という「損失回避欲」(61.6%)、「未知なるものを知りたい・出会いたい」という「発見欲」(61.6%)が続いた。
同社は「訪日意欲のある中国人生活者向けの情報発信に際して、自己完結によって満たされる、これらの欲求(充実系欲求、安心系欲求)を捕捉することは特に重要だと考えます」と説明。中国からのインバウンド本格回復の鍵となることを示した。
※1 2019年~2020年に、生活情報プラットフォーム「大衆点評」を海外渡航中に利用した人。
※2 博報堂行動デザイン研究所が定義した、次世代型行動デザインモデル「PIX ループ™」の概念を用いて調査。同モデルは博報堂行動デザイン研究所が、いまどきの生活者は情報行動と消費行動を明確に区別せず、「Pool (情報を引き寄せ貯めておく)」⇒「Ignite (気持ちに火が点く)」⇒「eXpand (体験をやってみて情報圏を拡げる)」という行動をループさせながら自己充足を図っていることを発見し、開発した。
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