『母親になって後悔してる』23人、孫がいる70代の女性も
『母親になって後悔してる』は、母親になって後悔する23人の女性が、子どもを持たない女性社会学者に今まで言えなかった本音を告白する本です。中には孫がいる70代の女性もいます。人生の大半を後悔し、その思いを長年誰にも言えなかったなんて、どんなに辛かったことでしょう。この本には、著者の分析も含めて、心に刺さるフレーズがたくさん出てきます。
「女性は完璧を目指す競争の中で一瞬たりとも休むことができない」
「控えめに言っても、不完全な世界において、子どもを持つことはひとつの賭けである」
「要するに、私たち〔女性〕は結局孤独なんです。外で働き、家の中でも働いて、どこにいてもスーパーウーマンであることを期待される」
「子どものために自分の人生をあきらめました」
「利用できる唯一のシナリオは『完璧な母』であり、そこを目指すしかない――それは実際には『理想的な従業員』と言える」
ひりひりする言葉が並びますが、子育て中の母親なら、たとえ後悔はしていなくても、一度はこういった思いが心をよぎる瞬間があるのではないでしょうか。
この本に登場する母親たちは、一様に、真面目で責任感が強く、そして子どもを心から愛しています。なのに(だから)生きづらい。後悔の理由はさまざまですが、この生きづらさは、ひとつには「後悔している」という感情の論理を否定されているからです。感情を持つことは、主体であり人間として生きていることの証拠なのに。母親は子どもに寄り添う「役割」を強いられがちですが、「主体的に生きる」という意識を持つことが、「子育ても大事だが、自分の生き方も大切にしたい」という願いが叶う方向に近づく鍵のように思います。
著者は、出生率3.0という子だくさんの国イスラエルで子どもを産まないと決めている社会学者です。ノンマザーである彼女に、後悔する母親たちが心を開いて率直な思いを語っていて、それを著者は共感をもって寄り添いながら分析しています。安心して話せる機会を持てたことを感謝する母親や、他の女性を助けるために後悔を分かち合うことが重要だと語った母親もいました。安心して話せる居場所を持つことの大切さ、価値観や立場が違う女性同士が連帯することの大切さも、この本は教えてくれるように思います。多様な生き方をしているひとりひとりが、みんなつながっていると思えると、少し楽になるのではないでしょうか。